■同じタカネビランジ?  山が変わるとお花の表情も変わる

千枚岳のお花畑に混じる白いタカネビランジ。砂礫に咲く姿と一味違う表情に出会える

 もう一座は、荒川三山の端っこにくっついているマイナーな山のイメージが強い千枚岳だ。以前にも書いたが、この山域は南アルプスでも屈指の花の山である。

 そんな花の山にもやはり、タカネビランジは咲くのだ。こちらはちょっぴり大人しめな白のタカネビランジ。鳳凰三山とは違い、砂礫にポツリと咲くのではなく、マツムシソウやタカネナデシコの淡い紫色とヨモギのなんとも言えない柔らかな薄緑色のお花畑に混じって咲く姿は、鳳凰三山の派手な咲き方とは違う魅力がある。数こそ少ないのだが、ガスの流れる日は特に、淡い色のお花畑に浮かび上がる白いタカネビランジの表情が美しさを増す。

 今年は残念ながら、千枚小屋などが営業を取りやめているので、バスの運行がなく、アクセスが難しい。それでも、椹島(さわらじま)への林道でマウンテンバイクに跨って山を目指す登山者にたくさん出会った。毎年訪れるたびに、違う表情に出会えるのが山の花の魅力だろう。見頃は終盤を迎えているが、今年はどんなタカネビランジに出会えるだろうか。

真っ白なタカネビランジ。千枚岳の岩場や砂礫に花株が多く咲く