■振り返るとクマ! 青く水を湛える大鳥池
池の畔からは稜線に建つ以東岳避難小屋が、ガスの切れ間からちらちらと覗いていました。
「遠いな〜」
水場で水を補給したら、東沢のインレットを目指して湖岸をいきます。きらめく水面に目を奪われつつも、ときおり現れる難所に気が抜けません。
東沢を渡って森のなかへ。ここがこのルートの正念場。急な登りが標高差700mほど続きます。晴れてくれたのは嬉しいですが、蒸し暑さがじわじわと体力を削っていきます。避難小屋の下には水場があるのは知っていたのですが、念のために少し多めに水を汲んできたので重たい。弱々しく鳴く蝉の声に、真夏に登るには辛すぎるだろうと、過ぎた季節を思い返します。
森林限界を過ぎる頃、まるでタイミングを合わせたようにガスが抜けていきました。振り返ると大鳥池が青く水を湛えています。その形は“手を広げたクマ”や“クマの毛皮”のようにも見えます。周囲の草原は紅葉が始まっており、穏やかに秋風が吹き抜ける牧歌的な景色です。
緩やかな丘のような地形を越えた先、稜線にポツンと建つ避難小屋へと到着しました。
■賑わう以東岳避難小屋! ドラマチックな夕暮れ
シーズン中は管理人さんも常駐する以東岳避難小屋はすこぶる綺麗。バイオトイレになっており、お酒、飲み物も購入できます。利用料2,000円を支払って宿泊(定員20人)することができます。
訪れたのは連休の最後の2日間です。昨日まではガラガラだったという小屋ですが、好天の匂いを嗅ぎつけて多くの登山者で賑わっています。とは言っても、以東岳避難小屋に宿泊するのは10人少々でした。
到着時には稜線付近はふたたびガスに覆われていたのですが、しばらくすると窓の外を眺めていた誰かの声。
「ガスが抜けた」
「きれい!」
ちょうど夕食を作り始めていたのですが、いったん手を止めてカメラを手に外に出ました。雲海の向こうに浮かぶ峰々が、茜色に染まっていきます。風が強く、もう一枚羽織ってくれば良かったと後悔しつつも、目まぐるしく移り変わる景色があまりにドラマチックで、すっかり夢中になってシャッターを切り続けました。ずいんぶん久しぶりに山で夕日を見た気がします。
小屋での夕食は、それぞれが持ち寄った食材で調理する熱気に溢れていました。お裾分けをしつつ、管理人さんを交えたトークで初対面の人たちとも和気あいあいです。これぞ東北の避難小屋文化の醍醐味ではないでしょうか。