薫風香る季節になりました。雪代が収まった雪国の渓流では雅やかな藤や艶やかなタニウツギの花が新緑に差し色を添えています。水温も程よくなってきており、渓を歩くのも気持ちがいいです。渓流釣りのシーズンも本格化してきています。
「そろそろかな」そう思って訪れたのは、長野と新潟の県境付近の河川です。この時期ならではの“儚い”光景に出会うためです。それはカゲロウたちが一斉に羽化して飛び交う“スーパーハッチ”です。初日はオオマダラカゲロウからエルモンヒラタカゲロウへのスーパーハッチの移行。翌日の夕べは大量のエルモンヒラタカゲロウたちに包まれてきました。
■儚い水生昆虫、カゲロウとは
水辺には多くの生命が息づいています。魚や鳥、そして昆虫(それ以外の生物も)たち。その昆虫のなかには、一生のほとんどを水中で暮らす“水生昆虫”たちがいます。初夏から夏の風物詩であるホタルの他、トンボ、ゲンゴロウ、そして蚊などよく知られた虫たちも水生昆虫です。
“水生昆虫”を代表するのが「カゲロウ」ではないでしょうか。その姿を見た(認識した)ことがなくても、その言葉は聞いたことがある人が多いのでは? 光の屈折現象としての「陽炎」も有名で、儚いものを例えるときに使われることがありますね。実際、どちらも儚い存在です。
国内にも数多くの種類が生息していますが、恐竜時代からの生き残り、「生きた化石」とも言われています。幼虫は長い時間を水中で暮らした後、水面付近で脱皮して亜成虫・成虫へと変態します。口が退化しているために食事を摂ることもなく、川の周辺を舞いパートナーと巡り会い、交尾をし、やがて命が尽きます。儚い生を実感させられます。
水面付近で羽化した(亜)成虫が突如水面に現れ、儚げに舞う姿は、まるで妖精のようです。成虫になるためには、まずはごく短い“亜成虫”という状態がありますが、種類ごと、さらには雄雌でも見た目が微妙に違います。よほど慣れていないと見分けるのは難しいでしょう。
虫たちの羽化のタイミングには様々な要因が絡み合います。予想どおりには行かない分、うまく遭遇できると喜びもひとしお。大量の虫たちが一斉に羽化する“スーパーハッチ“ともなると「なんとなく起きそう」という予感を頼りに、足繁く川へと通うしかありません。