■リフト券代を16万円に抑える「早割」と「優待」の併用戦略

短いウィンターシーズンを、家族みんなで楽しむためにはさまざまな工夫が必要だ

 55日間の滑走を支えるリフト代16万円は、緻密な計算に基づいたシーズンオフからの準備にその秘密があった。

 今回取材した家族は、メインゲレンデのシーズン券を確保しつつ、その他シーズン中に行くであろうスキー場の早割券を、シーズン前の合同イベントで計6万円分購入する。

 特筆すべきは、「子どものシーズン券」に付随する大人割引券の活用だ。子どものシーズン券1枚に対して数枚付いてくる割引券をフル活用することで、大人が高額なシーズン券を浮かせている。「どこで滑るか」も大事なのだが、それ以上に「どのように券を準備するのか」が、物価高時代の生命線となる。

■道具選びは「大型店」をハブにする。ポイント還元という防衛策

 道具代34万円の内訳は以下の通り。

長男/ウェア、ゴーグル、板、スキー靴
次男/ウェア下のみ
母/ブーツ、インソール、バイン、ゴーグル
父/ウェア

 ちなみに毎シーズン「誰かの何か」を必ず購入しているというが、この大きな出費もネット購入などではなく、しっかりと計画的に行われている。

 あえて大型スポーツ量販店でギアを揃えることで、ポイント還元を狙う。大きな出費によって付与されるポイントは、そのまま子どもの通学靴やジャージといった「日常の必需品」へと形を変える。スキーやスノーボードを独立した趣味として捉えるのではなく、家計全体の収支の中に組み込むことで、高価なギアの導入を「持続可能な投資」へと変えているよい例だ。

■「上達」への投資と「食費」の徹底的なコストカット

また見たいと思えるような、すばらしい景色に出会えるのがウィンタースポーツのすばらしさでもある

 スキー場での華やかなランチ(ゲレ食)は、たまに訪れる遠方のスキー場のみとし、基本的には行わない。4人分で1,500円以内に収まるお弁当とおやつを持参し、徹底的にコストを削る。 その一方で、スクール代には18万円を投じ、単に滑る時間を増やすばかりではなく、正しい技術の習得を目指し、子どもたちは検定という目標を設定している。この「上達という体験」への投資が、雪山へ通う動機を強固にし、結果として1回あたりの価値を高めているのだろう。

■物価高の中で「雪山の火」を消さないために

「節約して、とにかく滑る」だけではなく、たまにはスキー場グルメを楽しむご褒美も

 物価高騰は、今後もウィンタースポーツ文化にとって大きな脅威であり続けるだろう。しかし、今回紹介した家族の姿は、一つの希望を示している。

 ウィンタースポーツの本質的な魅力は、消費することではなく、自然の中で技術を磨き、家族や仲間と共有する「体験」そのものにある。ゲレ食を豪勢に食べることや、最新モデルを毎年全身揃えることが目的ではない。

 「賢く準備し(早割・ポイント)、無駄を削り(食費)、成長に投じる(スクール)」。このようなメリハリのある経験への投資こそが、これからの時代のスタンダードになるはずだ。スキー離れが懸念される今こそ、「いかに安く済ませるか」という消極的な節約ではなく、「いかにして価値ある1日を創出するか」という前向きな姿勢を持つべきである。その情熱がある限り、スキー場からスキーヤー、スノーボーダーが消えることはないだろう。