◼️オーストラリア出身のクラスメイト

 そんな、どこか個人主義的なキャンパスライフだが、僕自身はネパール語を学ぶために来ているので、不満はまったくない。むしろ、今のところは心地よくさえある。

 そのなかで、自然と話すようになったクラスメイトがいる。オーストラリア出身のアンジーだ。

クラスメイトのアンジー

 年齢も近く、どこか似た匂いを感じたのか、気づけば授業前後に少し言葉を交わすようになった。

 彼女は、これまでに35か国ほど旅してきた旅人だという。日本にも3〜4回来たことがあるそうだ。

 数年前、アジアの国々を巡る旅の途中で、初めてネパールを訪れた。そのときのことを、彼女はこう話してくれた。

 「ネパールにいると、ここが自分の居場所だって、直感的に感じたんです。ずっと前から惹かれていた場所で、実際に来てみたら、静けさと混沌が同時に存在している。そのギャップがすごく好きになりました」

授業で使用しているネパール語の教科書

 いったんオーストラリアに戻ったあとも、その感覚は消えなかったらしい。数年後、やはりネパールで暮らしたいと思い、この学校に入学したという。

 彼女のように住みたいと思って入学する人は多い。ネパールに来た際に、この国の人や文化や自然、雰囲気に強く惹かれてしまうのだ。

 彼女がこの先、どれくらいネパールにいるのかはわからない。それでも、ネパール語を学ぶ同志として、互いに刺激を受けながら過ごせたらと思っている。

◼️気に入っているのは小さな学生食堂

キャンパス内にある食堂。学生以外も自由に使用できる

 キャンパス内で、僕がひそかに気に入っている場所がある。それが学生食堂だ。

 ごく小さなローカル食堂のような雰囲気で、席数も多くはない。多くの学生は注文した食事を外のオープンスペースに持ち出して、お茶や軽食を楽しんでいる。

 ネパールの家庭料理ダルバート(ご飯と豆スープと副菜がセットになった定食)のような定食メニューはないが、軽食のバリエーションは意外と豊富だ。

大学の食堂でオーダーしたパスタとアルー(じゃがいも)。ひとつの皿に盛られるので一体化している

 なかでも僕のお気に入りは朝食メニュー。パスタ、アルー(じゃがいも料理)、チヤ(ミルクティー)のセットで、たったの100ルピー。日本円にして約109円。町の食堂よりも少し安いのがうれしい。そして、ちゃんと美味い。

チヤと呼ばれるネパールのミルクティー

 放課後、食堂でチヤを飲みながら、「ああ、自分はいま学生なんだな」と、じんわり実感する。

 30年ぶりのキャンパスライフは、思っていたより静かだが、いまの僕にはこのくらいが心地良い。