■モンカゲロウ舞うプールの魔法

やがて両岸の崖、急斜面から解放されて景色が開けました。まるで夜が明けたかのよう、世界はこんなにも明るかったのだとびっくりします。そんな明るい気持ちになったのはいい魚が釣れたせいもあるでしょう。
濃い緑を映す水面が美しいプール。先ほどまでとは一転、気持ちに余裕ができたので同行のルアーマンの釣りを後ろから見守ります。すると、ふわふわと白っぽい大型のカゲロウが飛んでいるのに気づきました。羽化したばかりのモンカゲロウたちのダン(亜成虫)です。水面から生まれてくるような羽化の様子は、まるで魔法のよう。しばし釣りを忘れてファンタジーの世界に浸っていました。
余裕があると魚もよく見えます。岩盤のスリットに定位している良型のイワナを発見しました。しばらく観察していると、そのすぐ先でライズがありました。ここで再び釣りのスイッチが入ります。かなり粘ってフライを流しましたがまったく無視されているようで、負けを認めざるを得ません。


その先の落ち込みの脇、深みのある反転流を狙います。なかなか反応がありませんが、いい魚が入っている確信があったのでしつこく粘りました。わずかに流し方を変えながらキャスティングし、じっくりと何度もフライを見せつけていると、ついに水面が割れました!
かなり強い引きごたえに尺上を期待させられます。藻の生えた岩盤に足を滑らせながらネットに導いたのは、尺にはわずかに届かないながらも、それは立派な体躯のイワナでした。もう十分です。同行者に残りのポイントは任せて満ち足りた気分で魚を眺め、そっと流れに帰しました。
そろそろ関東甲信越も梅雨入りしそうです。雨の日が続くと気が滅入りますが、森や川に息づく生命たちにとって重要な役割を果たしてくれます。大きな災害が起きないことを願いつつ、恵みの雨となってくれることに期待しています。
