焚火や料理など、アウトドアのアクテビティで頼りになるナイフ。野遊びアイテムの象徴のひとつでもあるナイフですが、日本には世界でもその名が知られるファクトリーブランドが少なくありません。今回はその代表ともいえる岐阜県関市のモキナイフを訪ね、その歴史や最新モデルについて紹介します。
■1907年から四代続く刃物ブランド

日本に優れたナイフブランドが存在する理由のひとつは、武士の象徴である刀を精錬する刀鍛冶の伝統を現在も引き継いでいる地域があるから。
モキナイフが本拠地を置く関市は、堺(大阪)や三条(新潟)と並ぶ“日本三大刃物の街”で、鎌倉時代から質の高い刀を鍛錬。800年にわたる刃物づくりの歴史を持ち、いまでもナイフや料理用の包丁をはじめ、産業や医療など様々な分野の刃物の生産拠点として日本最大の出荷量を誇っています。

ナイフの種類は大きく分けて2種類。職人が一本一本自らの手で生み出すカスタムメイドと、工場で量産されるファクトリーメイドがあります。
モキナイフはその高い精度と仕上げの美しさから「カスタムメイドレベルのナイフを製造するファクトリーブランド」とも呼ばれる存在です。

モキナイフ代表の櫻井哲平さんは同社の特徴について「ナイフの世界にも様々な考え方がありますが、一本のナイフを職人が責任を持って丁寧に仕上げるという意味では、カスタムメイドとモキのナイフでは、かける手間や作業工程はそれほど変わらないはずです」と説明します。

工場の応接室にあるナイフを手に取ると、寸分のくるいもないナイフエッジをはじめ、極めて精巧に組み合わされた刃とハンドル材の接合部の美しさに驚かされます。そんなモキナイフの歴史は1907年に始まります。
「曽祖父にあたる櫻井茂一がこの地で刃物造りを始めました。その息子の茂貴が第二次世界大戦から復員し代表になったタイミングでナイフ作りを本格化。『桜井ナイフ製作所』を屋号としました」(櫻井哲平代表)
二代目の茂貴氏は手先が器用で、折り畳み式ナイフのロック機構を発展させた人物だったのだそう。
「茂貴の時代から海外との取り引きが増えましたが、外国の方には『サクライ』というのが発音しづらく、茂貴(しげき)のニックネーム“モキさん”にちなんで1987年に「モキナイフ」と改称。オリジナルブランドの開発に重点を移していきました」(櫻井代表)