兵庫県丹波篠山市の荒木城跡(標高404m)、別名・細工所(さいくしょ)城跡は、以前から筆者が気になっていた山城跡だ。というのも細工所交差点付近から城跡を見上げると、山頂は絶対に景色がいいということが、登らずともわかってしまうからである。


ちなみに現役時代の荒木城は明智光秀の丹波攻めの際、進行してきた明智軍を何度も撃退した荒木氏綱の本拠地。荒木氏綱はその勇猛な戦いぶりから「荒木鬼」と呼ばれたとのことだ。荒木城落城後、荒木氏綱は明智光秀の家臣となったとされ、本能寺の変などの紆余曲折を経て、子孫は陸奥国三春藩(福島県田村郡三春町)の藩主となり、明治維新を迎えたという。
なお、荒木城は京都から篠山に入る交通の要所にあった城。現在もここは国道173号と篠山市街地へ至る兵庫県道702号の丁字路交差点(細工所交差点)となっており、依然交通の要所であり続けている。
■荒木城跡、別名細工所城跡



荒木城跡は登山口からわずか35分でサクッと登れる。道ははっきりしており、案内板も多いため、迷う心配はない。山頂に近づくと、明智光秀が攻めあぐねたのにも納得できる壁のような急坂が続く。急傾斜の坂は、登りより下りのほうが危ない。しかしよく整備された荒木城跡の登山道は、そうした危険個所をすべて鎖場にしているため、とても安心感があった。



荒木城跡がある山頂一帯には、広範囲にわたり曲輪(くるわ)跡が広がっている。曲輪とは、土塁や石垣、堀などで区画された城郭内の平坦な土地のこと。どうやら荒木城は、かなり大きな山城であったようだ。



またいくつかの主要な曲輪は眺望スポットになっており、景色を見渡せば、明智光秀を迎え撃つような気分になってしまう。とはいえ荒木城跡はとてもきれいに整備されており、日当たりもよく、気持ちの良いのんびりした場所であった。