■標高日本一の幻想的な白駒池と、苔むす秋の北八ヶ岳 にゅう&中山の大パノラマを楽しむ登山レポート!

●麦草峠から白駒池を経て、にゅうの山頂へ!

湖面に雲を移す白駒池。筆者が訪れた初秋の早朝、一部に薄い氷が張っていた

 麦草峠の駐車場から白駒池に至る道のりは、木道が整備されており、登山者以外の観光客も行き来している。高低差も少なく、平坦な道が続くので北八ヶ岳らしい幻想的な「苔の森」を楽しみながらゆっくり進もう。

 歩き始めて40分ほどで青い水面が見えてくる。標高2,000m以上の高地にある最大の湖・白駒池だ。天気のいい日には、湖面に周囲の山々が映し出され、幻想的な光景となる。湖畔には原生林が茂っており、足元には、一面しっとりした苔の絨毯が広がっている。

 さらに木道を進み、白駒湿原を抜けると、いよいよ本格的な登山道が始まる。樹林帯の中、登山道の両脇を苔が覆う様子は、まさに「苔の森」だ。

 白駒池を過ぎてから1時間ほどの樹林帯歩きを過ぎると、やがて正面に見えてくる岩峰が「にゅう」である。変わった名称のイメージとは違い、ゴツゴツした岩稜の山容だが、樹林帯を抜けてからの岩場も足場はしっかりしているので安心してほしい。

 麦草峠出発からおよそ2時間。辿り着いたにゅう山頂は、南八ヶ岳の硫黄岳(いおうだけ)と天狗岳(てんぐだけ)の眺めがすばらしく、その向こうには富士山も見える。また、眼下にはさきほど通ってきた白駒池が見え、森の中に浮かぶような姿で登山者を楽しませてくれる。

●本コース最高地点「中山」山頂で、ケルンと絶景を堪能!

中山展望台は、岩々に覆われた見晴らしのいい山頂。あちこちにケルンが建っている

 続いて向かうのは、今回紹介する周回コースの最高地点となる中山。距離にして2km弱、1時間ほどの道のりだ。再び樹林帯へと入っていくが、時折展望が開け、絶景が疲れを吹き飛ばしてくれる。

 中山山頂の標高は2,496mあり、本コース最高地点なのだが、山頂は木々に覆われており展望はない。しかし我々が望む大パノラマは、5分ほど進んだ先の「中山展望台」が叶えてくれる。

 岩と背の低い緑で形成された展望台で待っているのは、遮るものが一つとしてない絶景。小石を積み上げたケルンとともに、思う存分景色を楽しんでいこう。ただし遮るものがない分、風の影響も強いので防寒対策を忘れずに。食事休憩をとる際は、火気の扱いにも十分注意してほしい。

●「高見石小屋」で憩いのひとときを経て、麦草峠でゴール!

 いつまでも見飽きない絶景で、大変名残惜しいが、周回コースもいよいよ後半だ。ここからは、木道が敷かれた樹林帯を進みながら、一気に標高を下げる。下り坂はついつい早足になってしまうが、足に負担をかけすぎないよう、登り以上に慎重に進もう。

 中山から高見石小屋(たかみいしごや)までは、1時間弱の行程だが、これまでに比べ大岩が目立つため少々足場が悪い。小屋に着く頃には疲れも感じているはずなので、しっかり休憩したい。ちなみに高見石小屋の揚げパンは、それ目当てで訪れる人も多い人気商品。運良くめぐり会えたら、ぜひ味わってほしい一品だ。

 高見石小屋から麦草峠までも、まだ1時間ほど歩く必要はあるが、高低差はさほどでもないので、北八ヶ岳の雰囲気を噛みしめるように歩を進めよう。5時間半の行程もいよいよフィナーレだ。

■北八ヶ岳の幻想的な苔の森と絶景パノラマの山旅

 にゅう山頂からは、荒々しい山容の硫黄岳の向こう、富士山の姿も見ることができた

 穏やかな原生林と、静かに水をたたえる白駒池。足元を覆う苔の森の静かな山から始まる今回の「にゅう」周回コース。

 白駒池から先に進むにつれ、それから徐々に山容は変化を見せ、急峻な岩山を思わせる一面も覗かせる。それを乗り越えた先に待っているにゅう山頂と中山展望台は、言葉を失うほどのパノラマ絶景だ。

 行動時間は5時間半に及ぶが、全体的に整備の行き届いた歩きやすいコースで、八ヶ岳入門としてもおすすめだ。ぜひ、にゅうの絶景と苔の森を満喫してほしい。

●にゅう・中山の周回コース 所要時間

麦草峠駐車場(0:00)→白駒荘(0:40)→にゅう(2:00)→中山(3:00)→高見石小屋(3:50)→丸山(4:20)→麦草峠(5:20)
歩行距離:約9.5㎞
累積標高差:登り612m、下り612m
合計所要時間:5時間20分

●【MAP】高見石小屋

●【MAP】麦草峠

●【MAP】にゅう