■テント場から見る特別な時間帯の景色

激しい雨の後、雲が晴れ、槍ヶ岳が雲の中から見えた瞬間

 常念岳山頂からは雄大な景色を満喫できたが、もっとも紹介したいのは常念乗越から望む、特別な時間帯の景色だ。

 夏の山は特に午後から天候が崩れやすく、筆者が訪れた時も15時くらいから2時間ほど激しい雨が降った。17時過ぎに雨音がテントをたたく音が小さくなってきたので外に出てみると夕立の後、雲が晴れ、槍ヶ岳がシルエットで浮かぶ幻想的な瞬間を見ることができた。

 徐々に日が傾き、太陽が西へと沈むと、今度は夕焼けの空に槍ヶ岳のシルエットが浮かぶように見え、夕食を食べるのも忘れ、見入ってしまうほどの絶景だった。

日が沈む前のテント場から望む景色。日帰りなら見ることのできない時間に山の上にいるのは贅沢と言える

 日が沈んでからも絶景は続く。闇に包まれると空には満天の星空が広がり、天の川を肉眼で確認することができた。普段見ている空とはまるで違う夜空を見ることができるはずだ。

 山の上では消灯時間が早い。20時から、遅くても21時には山小屋の電気は消える。その分、起床時間も早いが、ぜひ日が昇る前に起き、朝焼けに染まる景色を見てみてほしい。

 東の空から太陽が昇る瞬間もすばらしいが、朝日が山に当たることで山が赤く染まる「モルゲンロート」が絶景だ。

朝日が当たった瞬間のモルゲンロート、待ち望んでいた人たちが歓喜で沸いた

 これだけの景色をテント場から望むことができ、絶景をみながらのんびりと朝食やコーヒタイムを楽しむことができた。

 2日目は常念乗越から一ノ沢登山口へと下山するだけなので、時間にも余裕がある。筆者は散策をしながら景色を満喫し、遅めの8時ごろに下山を開始。約3時間5分で下山できるので、お昼前には登山口へと戻ってくることができた。

 夏とはいえ、夜は気温が下がり、テント場では10℃を下回っていたため、防寒対策をしっかりできるようにしたい。

 北アルプスは急峻で危険の多い山も多く、標高も3,000m級の山々であることから難易度は高い。だが、景色のスケールは壮大で、一度みたら虜になってしまうはずだ。日帰りでの登頂も不可能ではない常念岳だが、1泊し、特別な時間帯の雄大な景色を満喫しに出かけてみてはどうだろうか。

 

【登山ルート】
DAY1
一ノ沢登山口⇒(3時間50分)⇒常念乗越⇒(1時間15分)⇒常念岳⇒(1時間)⇒常念乗越
DAY2
常念乗越⇒(3時間5分)⇒一ノ沢登山口

●【MAP】一ノ沢登山口 長野県安曇野市