高山でたくさんの花を見ても、なかなか花の名前が覚えられないという人は、多いのではなかろうか。筆者も毎年、花の名前を覚えては、翌年には忘れてしまう繰り返しだった。似たような色や形、大きさの花は区別がつきにくく覚えにくい。

 そこでこの記事では、高山で見かける色や形が特徴的な花、11種を紹介する。よく見かけて比較的覚えやすい花ばかりなので、まずはこの11種から覚えてみよう。

■ 1. ギンリョウソウ、一度見たら忘れられない怪しい姿

ギンリョウソウ(奈良県 八経ヶ岳)

 「ギンリョウソウ」は葉緑体がなく、全体が白色の植物。別名「幽霊草」とも呼ばれており、その姿を見れば納得だ。

 茎の先に花が一つ咲く。花は少し細長く下向きに咲き、まるで竜のような姿から「銀竜草」と名が付けられている。

 4月から8月、山中の薄暗く湿った場所に生え、花を下からのぞき込むと目玉が一つ見える。

 一度見たら忘れられない、独特な姿をした植物だ。

ギンリョウソウの花をのぞき込むと目玉が見える(長野県 燕岳)

■2. サンカヨウ、長雨にさらされると透明になる花

長雨にうたれて、スケルトンになったサンカヨウ(岩手県 八幡平)

 「サンカヨウ」は「スケルトンフラワー」とも呼ばれる神秘的な花。数日間、弱い雨に濡れ続け、低温高湿になると花びらが透明になる。

 高山植物の一種で、花期は5月から7月。

 ギザギザのある20〜30cmほどの大きな葉が特徴的で、真ん中に直径2cmほどの白い花を3〜10個ほど咲かせる。

 花が終わるとブルーベリーのような紫色の実ができる。実は食べることができ、味はほんのりと甘酸っぱい。

紫色に熟したサンカヨウの実

■3. コバイケイソウ、花が群生すると幻想的

コバイケイソウ(岩手県 八幡平)

 「コバイケイソウ」が群生すると、幻想的でとても美しい。ただし毎年花が咲くわけではなく、3〜4年周期で当たり年がある。

 美しい花だが、実は毒草。決して食べてはいけない。

 6月から8月、山地の湿原に生える。草丈は50〜100cmほどで、梅に似た小さな白い花が円錐状になって咲く。花を見るより葉を見ることの方が多い。葉の形が特徴的で、広い楕円形の強そうな形をした葉は、山中でとても存在感がある。一度見たら忘れられない姿だ。

コバイケイソウは花が咲いていない、この姿で見ることが多い(岩手県 八幡平)

■4. ゴゼンタチバナ、登山道でよく見かける花

ゴゼンタチバナ(秋田県 秋田駒ヶ岳)

 「ゴゼンタチバナ」は、筆者が山で最もよく見かけると感じている花の一つ。高山や花で有名な山に登ったことがある人ならば、一度は目にしたことがあるのではなかろうか。

 6月から7月にかけて亜高山帯など、広範囲に分布している。

 草丈は5〜20cmほど。十字に並んだ花びらのように見える白い4枚は、実は装飾花で、花は真ん中の小さな集まりだ。葉が4枚と6枚のものがあり、花がつくのは6枚の葉がある茎のみ。

 秋になると赤い実を付ける。

■5. キヌガサソウ、存在感のある花と葉

キヌガサソウ(岩手県 八幡平)

 「キヌガサソウ」は、存在感のある花と葉が特徴的。8〜10枚ほどの大きな葉を傘のように広げた姿から「衣笠草」と呼ばれている。

 葉の真ん中に直径6〜7cmほどの大きな花を付ける。花の色は咲きはじめは白だが、淡い紅色に変わっていく。

 6月から8月にかけて、亜高山帯の湿った場所に生える。