淡路島(あわじしま)は、瀬戸内海東部に位置する兵庫県に属した島で、約13万人が暮らしている。その規模は、離島としては沖縄に次ぎ2番目。温暖で住みやすく、観光地としても人気だ。

 島は3市で区分される。1つめは淡路市(あわじし)。世界最大の吊り橋・明石海峡大橋(あかしかいきょうおおはし)で神戸市と結ばれる市で、明石海峡公園や県立淡路島公園など、広大な花緑施設が多くある。本州側からの淡路島アクセスの玄関口だ。

 続いて、島中央に位置する洲本市(すもとし)。大阪湾に面する洲本城の城下町として古くから栄え、有名な洲本温泉や海鮮丼などが有名。

 3つめの兵庫県最南端の南あわじ市は、鳴門大橋(なるとおおはし)で四国と結ばれている。世界三大潮流の1つ、潮の満ち引きが作り出す大渦・鳴門海峡の渦潮(うずしお)や、五色浜(ごしきはま)など、貴重な観光資源に恵まれたエリアだ。

 また、淡路島を語るうえで欠かせないのが「国生み(くにうみ)神話」。日本最古の歴史書、古事記(こじき)の冒頭にある天地創造の物語で、淡路島は日本で最初に生まれた島として描かれている。そして「日本で最初にできた山」として名前があがるのが、淡路島の先山(せんざん)だ。

 今回は「淡路富士」と呼ばれる先山と、「淡路島最高峰」の諭鶴羽山(ゆずるはさん)、島内グルメや特産品、観光スポットを紹介する。

■神話と大自然に彩られた淡路島最高峰「諭鶴羽山(ゆずるはさん・標高607.9m)」

 諭鶴羽山は、淡路島南部をほぼ東西に連なる諭鶴羽山地の西部に位置する、標高607.9mの山である。その標高は諭鶴羽山地の最高峰であり、淡路島の最高峰でもある。

 諭鶴羽山一帯は、瀬戸内海国立公園に指定されており、なかでも諭鶴羽神社境内神域は国立公園特別地域で、「親子杉」や「アカガシ群落」などが見られる。ほかにも、近畿百名山やふるさと兵庫の50山に選定されている。

●裏参道・諭鶴羽古道を経て、山頂へ

 古くより修験道(しゅげんどう)の聖地として信仰を集めてきた、諭鶴羽山の登山道。 ハイキングコースとして「諭鶴羽古道コース」があり、南側の海に面した灘黒岩(なだくろいわ)バス停から登る「表参道コース」と、北側の諭鶴羽ダムから登る「裏参道コース」がある。どちらも上り約1時間半の道のりだが、表参道は距離が短い分、急坂が多く険しいので、ここでは裏参道を紹介する。

諭鶴羽ダム付近の無料駐車場を利用し、諭鶴羽山山頂を目指す(国土地理院地図より引用)

 諭鶴羽ダムは、諭鶴羽山の原生林から湧き出る水を蓄えており、淡路島に住む人々の生活を支えている。また、ダム湖畔は公園として整備されており、無料で利用できる駐車場も。ダム上流に架かる橋は「ほたる橋」といい、例年6月初旬から2週間ほどの期間、数え切れないほどのゲンジボタルが飛び交う幻想的な光を見ることができる。

 諭鶴羽ダムの遊歩道から登山道へ。裏参道と呼ばれているが、登山道は整備が行き届いており、とても歩きやすい。山頂までの歩行距離は3.4㎞で、傾斜はなだらかなところが多い。辺りを見渡すと、人の手が加わっていない森林が生い茂り、豊かな自然の中を気持ちよく歩くことができる。

 ところどころ現れる石碑や石像を眺めながら進んでいくと、およそ1時間30分で広く展望のよい諭鶴羽山山頂に到着だ。瀬戸内の美しい海と、海に浮かぶ島々の景色を堪能できる。

 体力に余裕があるなら、15分ほど進んだ先の、鶴の紋が神々しい諭鶴羽神社にも参拝していこう。日本の島々を、そして山々をつくったという「国生み神話」が残る淡路島。その「国生み」の神、伊弉諾(いさなぎ)と伊弉冊(いざなみ)が鶴の羽に乗って舞い降りたとされる諭鶴羽神社。きっと厳かな気持ちで下山ができることだろう。

石碑の立つ山頂では、瀬戸内の雄大な絶景が広がり、四国も見渡すことができる
静かに湧き水を蓄える諭鶴羽ダム。春は一面の桜が、夏にはホタルが観光客を楽しませてくれる

●【MAP】諭鶴羽ダム

住所:〒656-0452 兵庫県南あわじ市神代浦壁