5月の連休前半、人混みで賑わう都心を抜け出し、南アルプスの山深くにある静かな沢へと車を走らせた。
長いアプローチの先に踏み入れた沢の水は、まだ山上にたくさんの雪が残っていることを思い出させるほど冷たい。しかし、周りの森は柔らかな新緑が芽吹き始めており、山の上にも春が訪れていることを感じさせてくれた。
■今年は沢の中も季節の進みが遅いよう
まだオープン前の林道ゲートからアプローチを頑張ったご褒美か、周りに他の釣り人は誰もいない。
はやる気持ちを抑えながら、タックルを準備し、ポツポツとテンカラで毛鉤を打ち込みながら釣り上がってみることにする。冬の間も似たような釣りをしょっちゅうしていたとしても、やはり春の沢シーズン初めは特別。気が急いてなかなかキャストが定まらないのは、毎年の恒例行事である。
例年であれば、この沢はドライでも元気の良いイワナが顔を見せてくれる時期だが、今年はどうも反応が鈍いようだ。都心では今年の桜の開花時期がだいぶ遅かったが、山の季節の進み具合も少し遅いのかもしれない。