年末年始の休暇で、全国各地に旅行をした人も多いのではないだろうか。神奈川県在住で旅が大好きな筆者もそのうちの一人。今回ははるばる九州の長崎県に属する離島「対馬(つしま)」まで行き、島のシンボル的な霊峰「白嶽(しらたけ)」に登ってきた。

 白嶽は古来より霊峰として島の住民に崇められてきた信仰の山で、大陸系と日本系の植物が混生する独自の植生があることから、国の天然記念物・国定公園特別保護区に指定されている。また、日本離島センターの定める「しま山100選」や九州百名山の一座として数えられており、標高518mと低山ながら山頂からは雄大な景色を楽しむことができる魅力あふれる場所だ。今回はそんな白嶽登山の様子を写真とともにお伝えする。

■「国境の島」対馬とは

 対馬は、九州本島の北東、韓国との国境に位置する九州最北端の島。面積は708平方キロメートルで、佐渡島、奄美大島に次ぐ日本で3番目に大きい離島だ。

 福岡空港からは飛行機で片道約30分、1日往復便が5本出ており、始発と最終便を組み合わせれば九州から日帰り旅行も可能というアクセスの良さだ。白嶽登山をする際も登山口までタクシーを使えば日帰りで十分可能だ。

 福岡県の博多港までは航路132㎞、韓国の釜山(ぷさん)港までは航路49.5㎞で結ばれており、実は日本より韓国に近い位置にある。そのため韓国からの旅行者が非常に多く、島内の案内標識や店舗のメニューには韓国語が併記されていることが多い。気象条件が良ければ、釜山の街並みが見えることから「国境の島」とも呼ばれている。

 また島の9割が山地で、各地に独特の生態系をもつ太古からの原生林が残されているため、ツシマヤマネコやツシマテンなどの固有種が多く生息しているのも特徴的だ。島の中央にはリアス式海岸・浅茅湾(あそうわん)が広がっており、その複雑で美しい景観は訪れる人々を魅了している。

■登山口から白嶽山頂を目指して

洲藻登山口(第一駐車場)から登山開始。4~5台停めることができる

 山頂へは車で厳原港(いづはらこう)から約30分、対馬ヤマネコ空港から約20分の位置にある洲藻(すも)登山口(第一駐車場)から最短ルートでアクセスすることができる。今回は、博多港からフェリーで対馬を訪れ、計4日間滞在し、一番天気の良い2日目に登山を実行した。バイクでツーリングも兼ねて対馬を訪れたので、登山口まではバイクで移動した。

 登山口から白嶽山山頂までは登り約90分、下り約1時間の行程だ。登山口にはトイレがないので、2㎞ほど手前にある白嶽登山者用公衆トイレ(第二駐車場)を利用しよう。

 公共交通機関でアクセスする場合は第二駐車場まではバスで行くことができるが、第一駐車場まで行きたい場合はタクシーを利用する必要があるので注意してほしい。

白嶽登りはじめは渓流沿いの道を歩く

 登り始めは渓流沿いの静かな山歩きを楽しむことができる。しばらくは透き通った小川を横目に植林された杉林の中を進んでいく。

石や岩が転がる白嶽登山道を進んでいく
白嶽登山道に設置された韓国語で「登山ルート」を示す黄色テープ

 20分ほど進むと、登山道は平坦で歩きやすい道から、段々と傾斜のある石や岩がゴロゴロとした道へと変わっていく。足場が悪いので慎重に進んでいこう。ちなみに登山道には道迷い防止の黄色テープが木に括り付けられている。こちらにも韓国語の表記があり、あらためて国境の島に来ていることを感じさせられる。

昔、修行に訪れた行者が寝泊まりしていたという行者の岩屋

 しばらく進んでいくと現れるのが巨大な岩「行者の岩屋」。昔、修行に訪れた行者が大岩の下で寝泊まりしていた場所だと言われている。

白嶽登山ルート分岐点の鳥居

 行者の岩屋から少し進んでいくと、上見坂方面と白嶽山頂への分岐点だ。鳥居をくぐるルートが山頂へと続く道だ。鳥居には「白嶽神社」の文字があり、ここから先は神聖な場ということが伝わってくる。

 鳥居から先は原生林の森へと変わる。そして、ロープが設置された急勾配の道になるので、一歩一歩確実に歩こう。

白嶽山頂直下。目の前の大岩(雄岳)の上が山頂
三点支持を意識して慎重に登っていく。白嶽山頂まであと一息