登山が楽しくなり、足腰を鍛えて夏の北アルプス白馬大雪渓にて初めての雪渓に大感激。暑い登山中に雪を触り頬ずりしたのを覚えている。関東生まれで雪知らずの筆者は山を通して雪のすばらしさを知り、今度は雪景色の中登山を楽しみたいと思った。

 雪山は装備もお金がかかるし、知識や経験を積む必要があると学んだが、今回は筆者が少しずつ雪山を知っていく段階でチョイスした山のひとつ、北八ヶ岳坪庭周辺を紹介する。

 八ヶ岳は冬山の中でも晴天の多いエリアだが、北西からの風が強く気温が下がる。

北八ヶ岳ロープウェイでかけあがり、雪の世界へ

 標高2,237mの坪庭へは、標高1,771mに位置する「北八ヶ岳ロープウェイ」で約7分。夏山から雪山へステップアップしたい登山者にはありがたい施設だ。 

■坪庭での雪山修行

雪山訓練中の同行者

 筆者は1月上旬から3月上旬にかけての天気のよい日を選び、最初は無理をせずに2回3回と回数を経るごとに少しずつ距離を延ばしたり、高低差のあるコースを選ぶなど、楽しみながら雪山スキルを上げていった。

北八ヶ岳坪庭周辺のモンスター

 また、あらかじめ登山雑誌や動画でアイゼンやピッケルの使用法、滑落停止の方法を学んだうえで、実際に坪庭の傾斜のゆるい雪面でアイゼンやワカン(輪かんじき)を装着しての歩行を練習した。

 ガイドや先輩に教わらずに個人で行ったこともあり、滑落や雪崩の危険のない緩い斜面を練習の場に選んだ。細心の注意を払いながら、徐々に使い方や歩き方を覚えていった。

北八ヶ岳登山道周辺MAP(写真提供:株式会社北八ヶ岳リゾート)

 坪庭周辺は網の目のようにいくつも登山道があり、難易度に合わせて登山を楽しめる。ありがたいことに夏山コースタイムで約30分で大体どこかの分岐やポイントに到着する。例えば坪庭から約40分で北横岳ヒュッテ、さらに15分歩けば北横岳山頂といった具合だ。

 ただし「夏山コースタイム」であるため、トレースの有無、降雪の状態でコースタイムが変わってくるので要注意。

 縞枯(しまがれ)山荘の先にある雨池峠から南に延びる縞枯山は比較的トレースもあり道も歩きやすいが、雨池峠から東方面の雨池や北方面の雨池山方面は大きな岩の連続する高難易度のコースとなる。初心者は絶対進入禁止だ。

 一方、坪庭よりすぐ右に曲がるとアップダウンのほとんどない登山道があり、こちらはトレースも多い。

かっこいい八ヶ岳と編笠山。手前の大きな石のような登山道は上級ルート

 筆者が行った雪山訓練のルートおよびコースタイムは以下の通り(全て日帰り)

1.(歩行訓練・滑落停止訓練 全行程1時間10分)/山頂駅⇒(30分)⇒五辻⇒(40分)⇒山頂駅
2.(歩行訓練 全行程2時間45分)/山頂駅⇒(1時間10分)⇒北横岳ヒュッテ⇒(20分)⇒北横岳⇒(15分)⇒北横岳⇒(1時間)⇒山頂駅
3.(歩行訓練 全行程2時間20分)/山頂駅⇒(20分)⇒縞枯山荘⇒(1時間)⇒縞枯山⇒(40分)⇒縞枯山荘⇒(20分)⇒山頂駅
4.(歩行訓練・滑落停止訓練全行程3時間30分)/山頂駅⇒(30分)⇒五辻⇒(120分)⇒縞枯山⇒(40分)⇒縞枯山荘⇒(20分)⇒山頂駅

坪庭からすぐ南下する水平道は見はらしのよい道

 天気がよければ遠くに北アルプスが見え、とても気分がいい。風も吹かなければ気温が上がり雪も溶けだす。この日は気温も上がり、春めいていた。

晴れた北八ヶ岳坪庭周辺登山道に鹿の足跡を発見!

 鹿の足跡を発見。片足ずつ足を動かし、しっぽを引きずらない足跡だ。なお、両足で踏み切る足跡はうさぎ、しっぽをひきずるのはキツネだ。

天気次第でルートが見えなくなる北八ヶ岳登山道

 晴れた日は展望がよい登山道も天候次第で視界が悪くなる。降雪でトレースが消えれば、ルートをラッセルなどで切り開く必要も出てくる。常に自分がどの位置にいるのかわかるようにして、天候悪化の兆しがあればロープウェイ駅や山小屋など安全確保ができる場所に向かおう。

天候が悪くなりそうだと判断し、坪庭へ戻る筆者