■アリタセラにてショッピング

美しく染付された有田焼は、器としてだけでなく洗練されたインテリアとしても映える(撮影:三浦かきつばた)

 閑話休題、アリタセラに到着したら、あとは心の赴くままに店を覗いてみよう。昔ながらの“the焼き物屋”といった重厚な構えの店もあれば、オシャレなカフェのような雰囲気の店もあり、さまざまな有田焼が楽しめる。

「MARUBUN BAKERY & CAFE」 広い店内に磁器がずらりと並ぶ様子は圧巻(撮影:三浦かきつばた)

 大小さまざまな作品が展示されており、値段の幅もとても広い。小さな皿で1000円足らずのものもあれば、同じサイズで3万円ほどもする、他と一線を画す商品も見つけた。

 「成形と絵付けの手間で値段が変わります。成形は型に材料を流し込んで画一的にできる方法と、手でひねる方法があります。絵付けもシールのように一発できれいに貼り付ける絵具もあれば、手で絵を入れて一つずつ仕上げる職人もいます。手作業だと完成品にも刷毛目(はけめ)が見て取れますね。どちらがいいということではなく、形にこだわる職人さんもいれば、せっせと絵を描く職人さんもいる。その違いでしょうか」と、スタッフの方が親切に説明してくれた。

 筆者が面白いと感じたのは、観賞用の大皿やガーデンテーブルなど大振りな作品まで販売されている点。中でもひときわ目を引く存在が、有田焼でつくられたお手洗いだ。

モダンな家庭用・業務用食器を販売する「山忠」に展示されている有田焼の便器(撮影:三浦かきつばた)
コップ、鏡、ソープディスペンサーに至るまで徹底して有田焼で統一。洗面ボウルは施設内トイレで使用されている(撮影:三浦かきつばた)

 非常に硬く、吸水性がないという有田焼の特長を存分に活かした超大作。これには思わず拍手してしまった。

 便器の価格は約40万円とこちらも拍手級のお値段。便器と水タンクが有田焼でできており、満開の桜の絵が一面にあしらわれている。ぶつかると割れてしまうためだろうか、さすがに便座と蓋はなかった。

 人生で一度はこんな豪華な便器で用を足してみたい! と思ったところ、「佐賀県立九州陶磁文化館」という有田駅からすぐの施設で、違うデザインの有田焼便器が使えるそうだ。有田観光の際には、ぜひ高級便器を眺めてほしい。

筆者が特に気に入ってじっくり眺めた福泉窯の器たち(撮影:三浦かきつばた)

 自宅用のお土産は普段使いのお皿を選ぶことに。魅力的な器が多すぎて、あちこちの店を回り直して長考してしまった。なお、最終的に購入したのは福泉窯の『菱形菊割向付』。

帰宅後すぐに購入した皿を使ってみた。鮮やかさと素朴さのバランスが絶妙で愛着が湧く(撮影:三浦かきつばた)