■ダイセンキャラボク純林は、国指定の天然記念物だ

山頂付近に広がるダイセンキャラボク
ダイセンキャラボクの赤い実

 8合目を過ぎると登山道が緩やかになり、木道が出現する。これは、ダイセンキャラボクの大群落や、そのほかの高山植物を保護するためである。ダイセンキャラボクは大山以外でも見ることができるが、大山のダイセンキャラボクは大群落を形成し、他の植物がほぼ生えていない「純林」であり、これは世界的にも珍しく、国指定の特別天然記念物になっている。

 ダイセンキャラボクは日本海側の高山に分布し、常緑の針葉樹の低木だ。大山8合目から山頂にかけて8ヘクタールもの大群落になっている。緑色の針葉樹の低木が一面に広がるのだが、過去に何度も大山に登頂しているにもかかわらず、気に留めたことがなかった。過去の大山登山が夏山シーズンの7~8月や、雪化粧目当ての11月だったため、申し訳ないが「木がある」くらいの認識しかなかった。花が咲いているわけではないので、一面に広がっていても、特別天然記念物でも、「おーっ!」とは思わなかったのだ。

 ところが、今回はどの木にも小さな赤い実がなっている。なんとかわいらしい。どこを向いても、赤い実をつけた木が広がっている。「これが、よく耳にするダイセンキャラボクか!」と気がついた。葉っぱだけだと地味な植物であるが、実をつけると魅力的な植物に変貌した。

 紅葉には少し早い登山だったが、ダイセンキャラボクの赤い実に遭遇できて、「この時期に来てよかった!」と思った。「大山山麓・日野川流域観光推進協議会」のHPによると、ダイセンキャラボクは「秋に赤い丸い実をつける」とのこと。紅葉真っ盛りの季節でもまだ実をつけているだろう。

■新しくなった頂上でランチと眺望を楽しむ

移設された頂上碑(撮影:笹田けいこ)
山頂付近から見下ろす日本海の絶景

 現在の山頂碑は、もともとこの場所にあったものではない。大山の山頂の南側の斜面は崩壊が進み、以前南側にあった頂上碑も崩落の危機を迎えていた。そこで2020年に頂上碑を10m北に移設した。元の頂上碑と同じ大きさ、同じデザインで、なるべく元の頂上碑に使われている資材を活用して移設されたそうだ。また多くの人が座って弁当などを食べることができる「山頂テラス」と呼ばれる休憩スペースも新たに作られた。頂上避難小屋も改修された。トイレや売店もあるが、売店は登山シーズンの休日を中心に営業しているので、利用を考えている場合は事前にFacebook「伯耆大山山頂小屋」で確認しよう。売店の営業はなくても、避難小屋やトイレは使用できる。

 山頂テラスで昼食をとったが、高山だけあって風が強く、長袖を1枚羽織ってちょうどよかった。

 2023年は頂上避難小屋周辺の木道整備と頂上避難小屋の電力増強工事が行われ、工事の進行状況によって通行できない部分もあるが、トイレの使用や登頂そのものには問題ない。

 登山道や頂上からは晴れていれば、日本海を望むことができる。弓ヶ浜の美しい弧を描いた海岸線は、「弓ヶ浜」という名のいわれを実感できる。中海、島根半島、空気が澄んでいれば、隠岐まで見える海の絶景と北壁のアルペン的な絶景と両方楽しむことができる贅沢な山だ。

 帰りは、来た道を戻るのが最短だ。6合目と5合目の間に、「元谷別れ」という分岐がある。元谷側に下りれば、元谷経由で下山できる。北壁を間近に仰ぎ見ることができるので、時間があれば元谷を通る「行者コース」もおすすめだ。

 

●【MAP】

 ※この記事の情報は2023年9月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報は地元自治体のHPでご確認ください。