秋といえば紅葉!  期間限定で色鮮やかに染まる山のなかを歩くのは、登山の醍醐味のひとつ。貴重な紅葉シーズンを最大限に満喫するために、山登りとその麓にある渓谷を見る、または遊歩道を歩いてセットで紅葉を楽しめる欲張りプランを紹介しよう。

■甲武信ケ岳(山梨県)1泊2日・標高2,475m

歩行時間:9時間10分 技術:★★☆☆☆ 体力:★★★☆☆

【ここがおすすめ】
1. 山の向こうに姿を現す富士山
2. 国内屈指の渓谷が登山道に面している
3. 登りごたえのある往路

●概要

  甲武信ヶ岳は山梨、埼玉、長野の三県にまたがる日本百名山の一座だ。山の名前をそれぞれ、甲州(山梨)、武州(埼玉)、信州(長野)の頭文字を取ったという説や、山容が拳のようだからと諸説ある。

 特徴的なのは山の形だけではない。麓にある美しい川や渓谷が見られるのも魅力の一つ。長野県側の登山口から登れば、千曲川の源流とされる西沢に沿って歩くことになり、苔むした幻想的なルートが続く。山梨県側の登山道入り口には日本屈指の渓谷美が堪能できる西沢渓谷がある。森だけでなく「水」の美しさも体感できる山なのだ。

●ルート&見どころ

 山梨県側から登る「徳ちゃん新道」は標高差が約1,200m以上あり、ルートタイムは往復で9時間を超え、体力を要する。ここでは山頂付近に建つ、甲武信小屋を利用する1泊2日のプランを練りたい。

 登山道は尾根を登り詰める道で緩斜面と急登を繰り返しながら歩く。ところどころ展望もよく、周囲の紅葉も美しい登りなのだが、地道なアップダウンが続くので踏ん張りたい。

徳ちゃん新道を登り切った先の戸渡尾根は木々の間から開ける場所も

 4時間ほど歩くと甲武信ヶ岳の小ピーク、木賊山(とくさやま)に到着する。木に囲まれているので眺望はないが、ここまで来れば登りはひと段落だ。

 さらに30分ほど歩いて、甲武信小屋に到着。森のなかにある広いテント場と大きな小屋がある。小屋に荷物を置くか、テントを張って身軽になって山頂へ向かおう。20分ほど登ると森を抜け、富士山の眺めが抜群の好展望地に出る。山頂はさらに少し登った場所だが、富士山を眺めるならこの展望地から見るのが良い。

山頂付近の展望地から見た富士山

 登りだけで6時間ほどかかるので体力の消耗を考え、小屋かテントで1泊して、翌日下山するのがベター。早朝に山頂まで登れば、朝焼けに染まる富士山の景色が見られるというのもお得な気分だ。

小屋から山頂までは20分なので、早朝はヘッドライトを点けて朝焼けを見に行くのもいい

●紅葉ガイド

 麓にある西沢渓谷の紅葉とセットで楽しむには、10月初旬~中旬がオススメだ。

 はじめの樹林帯ではモミジ、ミズナラ、ブナの木が赤や黄色に色付き、頭上を彩ってくれる。

 登り続ける往路では休み休み周囲の紅葉を愛でながら登りたい。上部の木賊山を過ぎた展望地や山頂付近からも麓に広がる色とりどりの紅葉の絨毯が疲れを癒してくれる。