<前編から続く 出発の「朝の悲鳴」&いちばん「難しいこと」とは?  燕山荘1泊2日「登山レポ」>

 突然、さくら(仮名)が「アルプスに登りたい」と言い出した。筆者が毎年夏にアルプス登山に行くので連れて行ってほしいと言うのだ。さくらは筆者の姪で、高校3年生、受験真っ只中であるのだが、少しの間勉強から離れたい、美しい景色を見たいというのだ。さくらが従妹である筆者の娘のひまり(仮名)に一緒に山に登ろうと提案し、娘もふたつ返事で承諾した。

 こうして2023年7月の夏休みに、現役女子高生2人とさくらの母である筆者の妹と母娘4人で北アルプスの女王「燕岳(つばくろだけ)」へ1泊2日のデトックス登山に行くことになった。出発に際し、登山届に四苦八苦したさくらとひまりは防衛大学の登山訓練生と出会い、このあと合戦尾根で驚きの行動に出る。

■急な登りが連続する第三ベンチから富士見ベンチ、2人の女子高生がとった行動は!?

登山訓練の大学生のあとについて登る、ひまりとさくら(撮影:兎山 花)

 午前8時6分、第三ベンチに到着し、ここで10分ほど休憩の後、ひまりとさくらは意外な行動に出る。「防衛大学の学生のあとについて登りたい」と言い出したのだ。さすがに筆者のスピードでは彼らと一緒に登れないので、次の富士見ベンチで必ず筆者を待つように伝える。第二ベンチから第三ベンチまで比較的緩やかな登りが続くが、第三ベンチから富士見ベンチまでは急登の連続である。彼女たちの体力でいったいどこまで彼らについていけるのか。

 8時15分に彼らが第三ベンチを出発すると、2人は素知らぬ顔であとについて登り始めた。8時45分に筆者が富士見ベンチに到着すると、2人は真っ赤な顔をして富士見ベンチに座っていた。途中あとをついてくる2人に気づいた彼らが励ましてくれたお陰で、なんとか急登を登り切ったそうだ。その表情は疲れているのにとても楽しそうだった。

 ここは富士見ベンチ、遠くに富士山が見えているのに2人はまだその姿に気がついていない。筆者が富士山の姿を教えると、彼女たちはさらに興奮した。

富士山を撮影するひまり(左)とさくら(右)(撮影:兎山 花)

■合戦小屋でスイカか、カレーうどんに迷う女子高生

合戦小屋に到着(撮影:兎山 花)

 午前9時26分に合戦小屋に到着する。合戦小屋は燕山荘が経営している山小屋で、売店やトイレを利用したりすることができ、筆者らもここで大休止する。合戦小屋では地元・長野県の松本波田産のブランドスイカ「下原スイカ」が売られている。ここでスイカを食べるのを2人とも楽しみにしていた。スイカは一切500円で売られており、希望により2分割にしてもらえる。さくらはスイカを頼み、ひまりはカレーうどんを頼んだ。

 ひまりに「スイカは食べないの?」とたずねるとスイカと迷ったらしいが体も冷えてきたうえに、お腹も空いているので「カレーうどんが食べたい」と答えた。お互いに相手が頼んだものが気になるらしく、さくらはスイカを食べながらうどんにすればよかったと言い、ひまりはうどんを食べながら名物スイカを選ばなかったことに未練が残る様子。

合戦小屋名物のスイカを食べるさくら(撮影:兎山 花)
合戦小屋でがっつりとカレーうどんを食べるひまり(撮影:兎山 花)