■森林限界を超えると、洋館のような燕山荘の姿が遠くに見えてくる
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合戦小屋を越えると、登山道に高山植物が現れてくる。「これは何のお花?」とまるで幼児に戻ったかのように次々と現れてくる高山植物に2人とも興味津々である。女子高生の一番のお気に入りは「ツマトリソウ(端取草)」だという。淡い虹色でふちどられた白く小さな可憐な花の姿に魅せられたようだ。
しばらく歩くと2,488.2mの三角点のある広場に出る。左手前方に表銀座の縦走コースの稜線、南の方角に富士山、北側に針ノ木岳、蓮華岳が見える。登山道に鎖のかかった岩場が現れ、アスレチック感覚で軽々と岩場を越えていく。
午前11時、燕山荘の赤い建物が遠く前方に見えてくると、2人のテンションが上がり、スマホ撮影が始まる。しかし、ここからが地味に長く、歩けども歩けども燕山荘との距離が縮まらず、再び2人のテンションが下がる。そのうち「もう疲れた」「遠すぎる」などと弱音が聞こえてくる。「あともう少しだから頑張ろう」と声をかけるが、彼女たちの耳には届かない。
しかし、燕山荘までの最後の登りを目の前にして、ひまりとさくらの顔がパッと明るくなった。先に到着した防衛大学の学生たちが頭上から手を振ってくれている。2人は笑顔で燕山荘への最後の登りを駆け上がっていく。11時30分、高山病を発症することもなく燕山荘に無事到着。彼らはこれから下山するとのことで、ベンチで記念撮影をして別れた。
■赤い登山服のおばあちゃんがいない
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燕山荘は収容人数650人の大型の山小屋施設である。筆者たちは上下二段ある蚕棚式(かいこだなしき)の上段部分を割り与えられた。畳敷で天井は低いが、小窓から景色が見え、消灯時間まで小部屋に電気が灯る。
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ここまで雨に降られることなく登ってこられたが、到着してしばらくすると本降りの雨が降ってきた。さくらとひまりは道すがら一緒に登ってきた、赤い登山服の年配の女性がまだ燕山荘に到着していないことに気がついた。彼女たちは心配になって館内を見回ったが、その姿はなかったそうだ。
しばらくすると、雨に濡れた登山者のために随所にある石油ストーブに火が入り、館内全体が暖かくなった。身支度を整えた後、喫茶サンルームでのんびりと過ごすことにした。今回、山小屋で書を書くために筆と墨汁を持って上がっており、今日1日の感想をそれぞれにしたためてもらった。さて何と書くのか母親として興味津々である。書には女子高生らしい、素直な気持ちが表れていた。
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夕食時に、彼女たちは赤い登山服のおばあちゃんの元気な姿を見かけ、胸を撫で下ろした。筆者たちより少し早めに到着したおばあちゃんは、燕岳に出かけた途中で雨に遭いはしたが、無事登頂し、燕山荘に戻ってきたそうだ。
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