梅雨も明け、本格的なアウトドアシーズンの到来。しかし、せっかくのお休みが雨だと、お出かけを諦めてしまう人もいるだろう。そこで提案したいのが、雨を楽しむ山登り。

 今回赴いたのは、京都の奥座敷、鞍馬(くらま)と貴船(きぶね)。ここは日頃、観光客でごった返しているが、雨の日は観光客はほとんどいない。そのため、雨の日に行くと鞍馬山をほぼ独り占め状態となる。しかも雨が降ると、山は神秘的な表情になり、晴天とはまた違う美しい姿を満喫できるのだ。

■雨の日の鞍馬山

 雨天のある日、筆者は「叡山電鉄」、通称「叡電(えいでん)」に乗り、鞍馬へと向かった。電車に乗っている登山客は、筆者だけだ。

日頃は観光客であふれる鞍馬駅も、雨天ではガラガラだ(撮影:野口宣存)
雨があたり美しい、鞍馬寺山門(撮影:野口宣存)
今回は故障で乗れなかったケーブルカー。運賃片道200円(撮影:野口宣存)

 終点の鞍馬駅を下りると、鞍馬寺の山門がすぐに現れる。愛山費(入山料)500円を支払い入山。少し登るとケーブルカーの駅がある。運賃は200円だ。筆者が訪れた際は、ケーブルカーの故障で運休していた。

鞍馬寺の眺望スポットからは真っ白で何も見えない(撮影:野口宣存)
雨煙る鞍馬寺と鞍馬山(撮影:野口宣存)

 山門から鞍馬寺までは30~40分登る。晴れの日だと途中で息切れして座り込んでいる人もいるが、雨の日は人がおらず、そのような光景は見られない。鞍馬寺の眺望スポットからは、霧で景色は見えないが、本堂裏の雨煙る山は風情がある。

少し霧がかる鞍馬山の山道(撮影:野口宣存)
鞍馬山の木の根道(撮影:野口宣存)

 本堂向かって左側の奥から、貴船に至る山道。牛若丸が烏天狗と剣の修業をしたという「僧正谷不動堂(そうじょうだにふどうどう)」を抜け、「奥の院魔王殿」を経由する。

鞍馬山の木の根道の奥にある大杉権現社(おおすぎごんげんしゃ)(撮影:野口宣存)

牛若丸が烏天狗と剣の修業をしたという鞍馬山の僧正谷不動堂(そうじょうだにふどうどう)(撮影:野口宣存)

 僧正谷不動堂と奥の院魔王殿の間の峠が、山道で一番標高が高いところ。この峠のすぐ横に、「木の根道」という脇道があり、「大杉権現社」を経由して、本線に復帰できる。10分程度の遠回りなので、体力に余裕があれば、立ち寄ってみるのもよいだろう。

鞍馬山、奥の院魔王殿。祀られているのは護法魔王(ごほうまおう)。悪い神様ではない(撮影:野口宣存)
魔王殿で出会った鞍馬山の子鹿(撮影:野口宣存)

 なお奥の院魔王殿では、思いがけず子鹿に出会えた。人を怖がらず、鹿のほうから1mくらいまで接近。一生懸命草を食べている姿を30分くらい眺めていたが、きりがないので貴船方面へ下山することにした。人が少ないと、野生動物の警戒心も薄れるのかもしれない。