■安全対策について

 出艇前に確認した予報・予想を超えて、出艇後に波が高くなるケースがある。筆者のこれまでの経験から、波が高くなる原因とそれらを回避する方法をまとめてみた。

●こんな時と場所には気をつけよう

1. 午後から風が強まる予報
午後から風が強まる予報の時は、予報時刻よりも早めに釣りを切り上げよう。
2. 外海に面している海岸、海風の影響を受けやすい場所
海風は何時に変わるという決まった時間がないため判断が難しい。前夜の気象条件をもとに大まかな目途を立てよう。
・前夜が晴れ→放射冷却が強い→気温上昇までに時間がかかる→海風の吹き始めが遅れる
・前夜が曇り→放射冷却が弱い→気温上昇が速くすすむ→海風の吹き始めが早まる
3. 急に深くなる地形の海岸
急に深くなる地形の海岸では、干満差の影響により波が打ち寄せるポイントが変化する。場所が同じでも、出艇時と着艇時で異なった波が発生していることもあるため、注意が必要である。
4. 遠くで台風が発生している時
台風が発生している状況であれば、たとえ自分の釣るポイントが出艇条件を満たしていたとしても海に出るのは避けよう。障害物のない海上では、台風の風により数百km先までうねりの影響が出るといわれている。

●波を回避するには

1. 出艇、着艇を海風の強まる昼前後の時間帯とずらして設定する
2. 海風の影響を受けにくい地形や内海を選ぶ
3. 干潮時の出艇場所の下見をしておく(急に深くなる地形は避ける)などの対策が求められる

 海上保安庁がまとめたシーカヤックの海難種類の多くは、船体側面から受けた波風による転覆、操作不能による漂流である。自力での着艇が難しいと判断した際は、防水対策をした携帯電話で118番に通報しよう。また、岸から見て異変のあるカヤックがいたら救助連絡を入れよう。

 いずれにせよ、日中の風が強まる時間帯の出艇&着艇は注意が必要だと意識しておくことが重要である。出艇時は凪の状態であったとしても、いつまでも続かない。気温上昇にともない風速、風向きは変化していくのが自然の摂理である。重大な海難事故に遭遇しないためにも、この記事が教訓となり、皆様の安全なカヤックフィッシングライフの役に立てば幸いである。

シーズンカヤック海難概要:https://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/05koutuuanzen/anzenjyouhou/panfu/images/kanu/jirei.pdf