埼玉県の武甲山(1,304m)は、秩父のシンボル的な存在。遠くからでもピラミッド型の山容がはっきりとわかる。純度の高い石灰岩を豊富に埋蔵していることから大正時代から採掘がはじまり、戦後の高度経済成長期には大量採掘されて、都内の高層ビルや高速道路などで使うセメントの材料とされた。山頂には日本武尊(ヤマトタケル)を祀った御岳神社が鎮座し、生川から山頂に続くルートが表参道とされている。

■一の鳥居がある生川から入山

武甲山登山の一般的なルートが生川から登る表参道コース

 登山の起点となるのは、一の鳥居があるが生川(うぶかわ)登山口。ここから山頂の御岳神社に至るのが表参道コースとされている。駐車場の入口に鳥居があり、その手前には「壱丁目」と記された丁目石(ちょうめいし)が置かれている。丁目石はコース上の各所に設置されており、御岳神社が鎮座する山頂が「五十二丁目」。これを道しるべに自分がいる場所を確認できるので、歩くペースを考えながら登っていける。

■林道や滝など変化が楽しめる登山道

森の間に流れ出る不動滝。すぐ側に祠もある

 歩き始めは生川に沿ってしばらく舗装された林道が続き、十四丁目あたりから本格的な登山路になる。背の高い杉が茂り、日差しを和らげてくれるので快適だ。駐車場から1時間ちょっとで不動滝のある「十八丁目の水場」に着く。大きな滝ではないが、澄んだ水が岩肌を流れる水音が涼やかだ。すぐ横に小さな祠があり、近くにペットボトルも置かれている。これは、滝の水を汲み、山頂トイレで使用するための水を登山者が任意で運び揚げるためのもの。ここから先はジグザグの登り道が続いている。

■巨木の杉がたつ広場でひと休み

大きな杉を中心に広場のようなスペースが広がる

 滝から30分ほど登ると、杉の大木がある「大杉の広場」に着く。ちょうどこのあたりが山頂までの中間地点。開けた場所にベンチが置かれ、ちょっとした休憩場所になっている。また、登山路の二十八丁目から二十九丁目の間には道祖神の祠があり、石灰岩の白い小石がお供えされた石積場を見ることができる。この石は山頂の神社で授かった「感謝石」というもので、小石の一つひとつに願い事が書かれている。大杉の広場を過ぎると登山道上にも白っぽい岩が増えはじめ、石灰岩と触れ合いながら歩くことができる。