群馬県安中市と長野県軽井沢町との境にある碓氷峠。1997年に廃止となった旧信越本線の横川〜軽井沢間は距離にしてわずか11.2kmだが、標高差は550mもあり、最急勾配は66.7パーミル(1000分の66.7)という、幹線鉄道としては世界一の急勾配として知られた難所だった。そして、この廃線跡を歩くツアーが「廃線ウォーク」だ。週末を中心に開催され、人気イベントとなっている。

廃線ウォーク https://haisen-walk.com/

 駅弁が大好きなアイドル、“さっほー”ことAKB48の岩立沙穂が食べた駅弁を動画で紹介するこの企画だが、「BRAVO MOUNTAIN」では初のロケとなる今回、この「廃線ウォーク」にトライすることになった。だが、ロケ当日は生憎の天気。雨予報を見たさっほーは、急遽ワークマンで揃えたという雨具を纏い、降りしきる雨にもめげず、ヘルメットを装着していざ出陣!

懐中電灯とヘルメットはレンタルできる

 25年も前に廃線になったとはいえ、雨風の入らないトンネルの中はキレイな状態で残されている。いまにも列車が走って来そうで、線路の上を歩くのは緊張する。廃線ではあるが、イベントの時以外は立ち入り禁止なのでご注意を。

 碓氷峠のちょうど中間あたりにあるのが旧熊の平駅だ。1893年(明治26年)に信号場として開設され、1906年には駅となり、1966年まで「峠の力餅」が立売販売された。秋には燃えるような紅葉に包まれる。日本の歌百選にも選ばれている童謡「もみじ」は、この熊ノ平駅から紅葉を眺めた作詞者の高野辰之が、その美しさに惹かれて詞を作ったという。

 本来はこの場所でお昼休憩となり、「峠の釜めし」を食べる予定だった。掛け紙は「廃線ウォーク」×「新・駅弁ひとり旅」のコラボによる特別バージョンだ。しかし、途中から雨足が強まって土砂降りになってしまったため、駅弁は横川にある「碓氷峠鉄道文化むら」でいただくことにした。

旧熊の平駅付近にて。もちろん廃線です

 歩く気満々で臨んだ廃線ウォーク体験だったが、雨のため途中で断念して横川駅に戻るすることになった。​

 「廃線ウォーク」の全貌は、この連載のアドバイザー(応援団)でもある櫻井寛さんが以前に軽井沢から横川まで踏破した体験ルポがあるので、チェックしてみて欲しい。

25年前に廃止された鉄路は驚きの連続! 鉄道フォトジャーナリスト櫻井寛が旧信越本線碓氷峠を歩く!「廃線ウォーク」【群馬県安中市】
 
国の重要文化財めがね橋の下で雨やどり

 横川駅はJR東日本信越本線の駅だ。かつては軽井沢、そして長野方面へと続く幹線の途中駅だったが、1989年に長野新幹線(現北陸新幹線)が開業し、現在は終着駅となった。軽井沢から先はしなの鉄道となったが、横川~軽井沢間は峠の上り下りに設置する設備の維持に多額の費用がかかるなどの理由から、第三セクター鉄道などに転換されることなく廃止された。

 碓氷峠は群馬県側の麓・横川の標高が387mなのに対して、長野県側の軽井沢は標高939m。峠のピークの標高が956mなので、ほぼ片側のみの急峻な勾配となっている。そのため山脈をトンネルで抜けることで峠越えの高低差を解消できる、両勾配を持つ一般的な峠と異なり、通行には数多くの困難を抱えていたわけだ。

 鉄道としては日本一の急勾配区間として知られた信越本線の横川~軽井沢間でも、峠を越えるために両駅で碓氷峠専用機関車を連結するために5分ほど停車しなければならなかった。名物駅弁「峠の釜めし」は、その停車時間を利用して誕生したのである。