秋になると本州の多くの一般河川の釣りが禁漁時期となる。それと入れ替わるように、ニジマスを放流して釣りを楽しめる「冬季釣り場」がここ数年かなり増えてきた。

 流れと景色、そして渓流魚の美しさに定評のある群馬県の神流川。今年も「冬季釣り場」が始まった。紅葉のピークにはまだ早いが、秋の気配が漂う渓の風情は趣きがある。果たして、人気の「ハコスチ」と出会うことができるだろうか。

■「関東一の清流」神流川 上野村の冬季キャッチ&リリース区間

 神流川は、利根川水系に属する一級河川で、群馬県南西端の上野村にある三国山に端を発する、全長87kmあまりの川だ。民家の裏を流れるような里川の雰囲気と、深い谷間の山岳渓流の顔を合わせもち、早瀬と淵が連続しており好ポイントが多い。上野村漁業協同組合(漁協)が管轄する。

上野村冬季ハコスチ釣り場。今年の紅葉のピークまであと少しか

 このエリアの一般渓流は、9月21日〜翌2月末日まで禁漁となるが、一部区間(「川の駅上野」裏)を「冬季ハコスチ釣り場」として10月上旬よりオープンしている。大型で美しいニジマス「ハコスチ」を狙い、連日釣り人たちで賑わっている。

※キャッチアンドリリースや魚の取り扱いについては、上野村漁協のウェブサイトを参照のこと。火曜定休となるので要注意!

上野村魚業協同組合(冬季釣り場):https://www.ueno-fc.com/winter

●ハコスチってなに? ニジマスとは違うの?

“引き”が強いだけでなく、美しさも魅力のハコスチ

 ハコスチとは、遊漁用に水産試験場が開発したニジマス(レインボートラウト)だ。野性味が強いスチールヘッド系ニジマスと、群馬県のみが保有する飼育しやすい箱島系ニジマスを交配したもの。スチールヘッド系の特徴を引き継いだ“引き”の強さと箱島系の姿形の美しさを併せ持ついいとこ取りの魚だ。

※群馬県が「ハコスチ」として商標登録している。

■放流直後のグッドタイミングかと思いきや……

 久々に訪れた神流川。川の駅上野の裏、冬季釣り場の流れは大きく様変わりをしていた。流れの位置が変わり、深みが増えたようだ。それでも魚影は濃い。良型のハコスチが悠々と泳ぐ姿に期待が高まる。張り切ってロッドにラインを通し、フライを結ぶ。

 放流されて間もない魚たち。受付で言われた通り期待とは裏腹に反応はかなり渋い。周りの釣り人のロッドも曲がっていない。場所のせいにしてポイントを変えようにも人気の釣り場だけに釣り人が多く、容易には移動できそうにない。ひと口にフライフィッシングといえど、釣り方は千差万別。思い思いのスタイルでロッドを振ってラインを伸ばしている姿を眺めつつ、何かヒントがないかと盗み見しながら釣りを続けた。

ただでさえ激しいファイトのニジマス。ハコスチはその上をいく

 昼前くらいになると、徐々に周囲のフライフィッシャーも釣れ出していた。僕はといえば、小物を数匹かけてはいたが、そこから鳴かず飛ばず……。けれど、出だしは首を傾げていた同行の先輩(ベテランフィッシャー)は、コンスタントに良型を釣っているではないか!