トレイルランニングや登山などで「ゼロドロップシューズ」が人気を集めている。ゼロドロップシューズとは、つま先とかかとのソールの高さが同じになっているシューズのこと。ソールの高さを同じにすることで裸足に近い状況を作り出し、正しい姿勢を保つほか、登山時の膝痛予防に効果があるといわれている。本記事では、登山ショップ店員の筆者が、ゼロドロップシューズの魅力や使用感、使う際に注意すべきことなどをお伝えする。
■裸足に近い感覚が得られる「ゼロドロップシューズ」
先述のとおりゼロドロップシューズは、かかと部分の高さとつま先部分の高さの高低差(ドロップ)がないシューズのこと。
一般的な登山靴はつま先よりもかかとが高くなっており、足が地面を蹴り、次の一歩を出すまでの一連の動きをスムーズにしている。一方で、地面に対して体を垂直に保つために関節や筋肉に負担がかかってしまい、関節痛などの原因になる。そこで、靴底をフラットにし、裸足で歩くのに近い自然な姿勢を保てるように開発されたのがゼロドロップシューズだ。
■一般的なシューズとの違いは?
一般的なシューズとの違いは、かかととつま先の高低差と、つま先の反り上がり具合にある。多くの登山靴は、つま先がやや反り上がっている。これによって体重移動がスムーズになり、次の一歩が出しやすくなっている。
一方、ゼロドロップシューズの多くはつま先が平らになっており、押し出されるような感覚は少ないものの、足全体の筋肉をバランスよく使った動きができるようになっている。
また、ゼロドロップシューズでは柔らかいソールを使っていることが多く、足の指で地面を掴むような感覚が得やすいのも特徴。ソールに頼りすぎない歩行により、滑落や転倒防止にもつながる。
■ゼロドロップシューズを使用して気づいたこと
筆者は半年ほどゼロドロップシューズを愛用しているが、山を歩いていくつか気づいたことがある。最も大きいのは、膝が痛くなりにくくなったことだ。テント泊装備など荷物が重い時には特に、登り終盤から下山にかけて必ず膝が痛くなっていたが、ゼロドロップシューズを使い始めてからはほとんど痛むことがなくなった。
その代わり、登山後には、ふくらはぎや足首に疲れを感じることが多くなった。ゼロドロップシューズは、クッションなどで膝への衝撃を抑えるのではなく、歩き方自体を変えることで膝への衝撃を足全体で吸収する。そのため、今まで膝に集中していた衝撃が分散されたことで足に疲れを感じるようになったのだ。