山形県、福島県、新潟県にまたがる吾妻(あづま)連峰は、東西約20㎞にわたる広大な山域。その西側に位置しているのが、山域で最高峰となる標高2035mの西吾妻山だ。日本百名山のひとつにも数えられるこの山は、天元台スキー場のロープウェイとリフトを使って入山が可能。とりわけ夏季は、可憐な山野草に癒されながら歩ける絶好のロケーションだ。
■リフトトップからいざ入山!
山形県米沢市にある天元台スキー場は、冬季はパウダーの宝庫として知られる極上スノーが楽しめるリゾート。雪解けのあとは6月からグリーンシーズンの営業がはじまり、ロープウェイとリフトを乗り継いで西吾妻山への登山を楽しめる。リフト最上部は標高1820mになるので、少ない高低差でピークを目指せることが利点だ。地元ガイドの案内とともに歩けば、山の成り立ちや地層、植物や歴史も楽しめる贅沢な旅になる。では早速、リフト降り場すぐ側の入山口から登山スタート!
■草花や木々の話を聞きながらがらのんびり歩く
人形石を経由するルートもあるが、今回は「かもしか展望台」に向かって山頂を目指すルートを選択。ガイドの近藤明さんは天元台スキー場にあるペンションのオーナーでもあり、山の知識はもちろんのこと、この土地の情報に精通しているので非常に頼りになる存在だ。歩きながらときどき立ち止まって、草花や木々の話をしてくれるので、歩みがのんびりというものありがたい。
紫の実をつけた植物は、「サンカヨウといって白い花が咲き、雨で塗れると花びらがガラスのように透明になるよ」と教えてくれ、輝きのある赤い実は「ベニバナイチゴというイチゴの仲間。食べることもできる」など、聞けばなんでも教えてくれる。また、このエリアに生息するアオモリトドマツは、東北エリアに多い固有種。「スノーモンスター」の名称で知られる蔵王山の樹氷もこの木だが、「この辺で見られるアオモリトドマツは、蔵王のものより小ぶりで“リトルモンスター”と呼ばれている」のだとか。
■夏はたくさんの山野草が見られる花の宝庫
20分登った場所にある「かもしか展望台」あたりから標高1900mを越える森林限界に入り、その先は背丈の低い木々が増えてくる。さらに進んだ窪地のような場所は、周辺にワタスゲが群生する見どころのひとつだ。「西吾妻山は水分をたっぷり含んでいるので“水の山”とも呼ばれている」と近藤さんが言うように、稜線まで登ると高層湿原が広がり、あちこちに池塘(ちとう)が点在するのが見られる。初夏から盛夏にかけてワタスゲやキンコウカなどの湿生植物が咲き、池塘に青空が映る様子に心が癒される。