北海道中央部に位置する大雪山系は、「北海道の屋根」とも称され、標高2000m級の山々が連なる。古来よりアイヌの人々から、カムイミンタラ(神々が遊ぶ庭)と呼ばれ崇拝される山々は、国立公園としても整備され、意外にも登山にチャレンジしやすい環境が整っている。今回は大雪山系のなかでも、特にチャレンジしやすい黒岳登山の魅力を紹介したい。

■ポイント1 高山ならでは! 生きものたちとの出会い!

登山道に現れることも多い、エゾシマリス(写真:佐藤麦)

 標高1984mの黒岳。その魅力は美しい景色と、過酷な自然環境で生きる、生きものたちとの出会いだろう。6月上旬頃から、短い夏を謳歌しようと色とりどりの高山植物が咲き、美しいお花畑が広がる。ベストシーズンは7〜8月と言われるが、秋の紅葉も美しい。大雪山系の紅葉は日本一早いとされ、黒岳山頂では例年8月末には木々が色づき始める。

 運がよければ、エゾナキウサギ、エゾシマリス、高山蝶といった動物たちとの出会いも。アイヌの人々は、植物や動物、自然現象といった身近なものをカムイ(神)の化身と考えるという。生きものたちがイキイキと暮らす黒岳は、まさに神々が遊ぶ庭。神々の世界に迷い込んだ気分を味わえるだろう。

■ポイント2 日本で3ヵ所のみの永久凍土!

黒岳山頂から、大雪山系の山々を望む(写真:佐藤麦)

 大雪山系には、夏でも雪が解けずに残っている雪渓や永久凍土が存在する。永久凍土とは、2年以上連続して温度が0℃以下になる地面のこと。これまで日本国内で永久凍土が確認されているのは、大雪山系、富士山、立山連峰の3ヵ所のみ。温暖化で融解が危惧される貴重な自然を、肌で感じることができる数少ない場所のひとつなのだ。