栃木県の奥地、「華厳の滝」や「いろは坂」とともに名を馳せる名勝地「中禅寺湖」。栃木を中心に隣接する群馬、福島の3県にまたがる、山々と流れ出した川、滝、湿原、湖沼などの自然が織りなす「日光国立公園」の一部だ。

 中禅寺湖の周辺には散策を楽しめるハイキングコースがいくつか用意されている。快適な湖岸歩きで男体山の眺めと森林浴が楽しめるのが、中禅寺湖南岸のコースだ。現在歩道工事のために途中までしか行けないのだが、手軽に楽しむのに区切りがついていいだろう。最後に美しい夕日を鑑賞すれば、充実した一日の締めにピッタリだ。

■新緑の森歩き! 小鳥の囀りに耳を澄ます

歩き出してすぐ、英国大使館別荘記念公園から見た中禅寺湖と残雪の日光白根山

 中禅寺湖は標高1,269mの山上の湖だけあって、朝夕は肌寒い。湖岸の桜もつい先日散ったばかりだ。樹々が一斉に芽吹く新緑の季節は、森が陽光を受けてまばゆく輝いている。

イタリア大使館別荘記念公園。お国柄がよく表れた瀟洒な建物

 賑わう「歌ヶ浜第一駐車場」を後にし、車道に沿って遊歩道を行く。すぐに英国大使館別荘記念公園、イタリア大使館別荘記念公園がある。避暑地として人気だった往時をしのぶ建造物もさることながら、そこからの眺めもすこぶるよく見惚れてしまう。

イタリア大使館別荘記念公園前の浜。時間に余裕があればベンチに座ってゆっくり時を過ごしたい。左から突き出している半島が八丁出島だ

 先へ進むとやがて観光客の姿も減り、木漏れ日差す道を静かに歩いていく。ハイカーと釣り人の世界だ。晴れた日は樹間から垣間見える、湖面のグラデーションに引き込まれるよう。小鳥たちの囀りが耳に心地いい、それに混ざってハルゼミの声も少しずつ混ざりだしている。

水色のグラデーションが美しい。まるで宝石のようで吸い込まれそう

■開放的なビーチ! 湖畔から男体山を眺める

阿世潟から正面に男体山を望む。湖のグラデーションが美しい。左から出ている岬の先に上野島(こうずけじま)がある

 遊歩道は湖に沿っている。進むにつれて男体山が見えたり隠れたりする。その変化もおもしろい。「狸窪(むじなくぼ)」、「八丁出島」を過ぎる。その先、「阿世潟(あせがた)」に連なる湖畔は開け、砂浜・ビーチになっているところがある。岸に腰を下ろし、正面に見える男体山をのんびりと眺めていると、駐車場からわずかな距離なのに、まるで無人島にでも来たような絶界の感があると言ったら大げさか……。

 空いているとき、できれば貸し切りなら最高なのだが、一帯はサルやシカ、クマなども生息するエリアだ。多少は人気があった方が安心かもしれない。あたりは原生林。巨木が森のあちらこちらに点在し、長い年月を経た重厚な存在感を放っている。さらに奥に進むと、道は急斜面をトラバースしていくのだが……。

森の中、どこまでも歩きたくなるような気持ちのいい道が続く

 残念ながら現在歩道の改修工事のため、阿世潟~千手ヶ浜間は令和4年9月末日まで通行止めとなっている。歌ヶ浜から阿世潟までは往復約2時間ほど。ここまでなら道もよくわかりやすいので、ちょっとした散歩気分で楽しめる。一人で歩く場合はとくに、クマ避けの対策やサルの群れには注意した方がいいだろう。

 歩き足りない方は、移動して戦場ヶ原や湯ノ湖、半月山のハイキングと合わせて楽しむのもいいかもしれない。

戦場ヶ原の遊歩道からの景色。神秘的な雰囲気の原生林と湯川の流れ