<前編>いま行かないと後悔する!  失われゆく最後の清流「カヌーイストたちの隠れ聖地」

 亀尾島川の川下りの後、川旅スポットとして立ち寄りたい場所といえば、やはり「郡上八幡」だろう。夏に夜通し踊り続ける郡上おどりで有名な城下町で、重要伝統的建造物保存地区に指定されている古い町並みが旅情を掻き立てるエリアだ。

  そのなかでも、川旅派として注目したいのは、水と共に生きてきた町の文化だ。今回はそんな郡上八幡の水のまつわる話を3つ、ご紹介していく。

■水の多目的利用がおもしろい!  生活の中に息づく「水システム」

 郡上八幡は周囲を深い緑の山々に囲まれており、町の中央には長良川最大の支流である吉田川が流れている。その恵まれた立地を生かして、町の中には古くからさまざまな「水のシステム」が整備されており、それらを見て歩くだけでも流域の暮らしを知ることができて楽しい。

郡上八幡を流れる清流吉田川

 まず水と共にある暮らしをもっとも実感できるのが、町のあちこちで見ることができる「水舟」と呼ばれる二槽や三槽からなる水槽だ。水舟には山水や湧水が引き込まれており、上段の槽は飲水用や野菜などを洗うために使われ、次の槽は汚れた食器などの洗い場となる。その時に出た食べ物の残りカスが、さらに下にある池や水路に飼われている鯉などのエサとなり、水は自然に浄化されて川に流れ込むというものだ。まさに理想的な水の循環システムである。

水舟。上槽には冷やしたきゅうりと塩と、飲水用の湯呑み茶碗が見える

 そして、町中には「いがわ小径」に代表される水路が縦横に流れている。前述した浄化用の鯉や魚が泳いでおり、民家脇では夏になればスイカが冷やされていたり、鮎釣り用のオトリ鮎が籠に入れてあったりと夏の風物詩ともなっている。水路の所々には共同洗濯場や芋洗い場があり、そこは同時に住民の社交の場にもなっている。まさに郡上八幡の人々にとって、水は生活のすべてに関わる大切な資源だということがわかる。

いがわ小径にある共同の洗い場
<前編>いま行かないと後悔する!  失われゆく最後の清流「カヌーイストたちの隠れ聖地」