山中に忽然と現れる、赤色の屋根や壁で統一された集落。ここは岡山県北西部、高梁市の吹屋(ふきや)地区。かつて「ベンガラ」と呼ばれる赤い顔料の生産地として栄え、「ジャパンレッド発祥の地」と称される。

 今回は、吉備高原の山々に隔絶された”赤い秘境”吹屋の見どころ、おすすめスポットを紹介したい。

■吹屋とは

 最寄り駅のJR備中高梁駅から車で山道を走ること1時間。吹屋は、標高550メートルの高原地帯に位置する。平安時代初期に銅鉱山が発見され、以来鉱山町として栄えた歴史を持つ。

 ベンガラは、銅の副産物として産出される顔料。伊万里焼や九谷焼など高級磁器の絵付け材料として珍重された。当時は国内生産量のほとんどをこの地でまかなっており、富を得た商人たちは赤い瓦とベンガラで自分の家を彩ったという。

 これらの歴史が評価され、2020年には「『ジャパンレッド』発祥の地~弁柄と銅の町・備中吹屋~」として日本遺産に指定された。