■築300年の鵜匠の家で、天然鮎料理と鵜匠どぶろくに舌鼓

 小瀬いえば、やはり外せないのが「小瀬鵜飼(おぜうかい)」だ。全国的にも、岐阜といえば鵜飼い!って感じで知られているが、何気に「で、結局鵜飼いってなんなん?」という人は結構多い。

 そもそも鵜飼というのは伝統漁法の1つで、魚を丸呑みする習性のある水鳥の「鵜(う)」を紐で操り、舟上で魚を吐き出させて鮎を捕えるというものだ。夜に舟上でかがり火を焚き、舟べりをたたくと、寝ていた鮎は「うお! なんだ!」となって身をひるがえす。すると火の明かりでキラッと魚体が光るので、それを鵜が潜水して捕えるのだ。鮎は鵜のくちばしに挟まれた瞬間にショック死するので、鵜飼いで捕れた鮎は鮮度も味もよく高級品とされている。鵜飼いの歴史も、美濃和紙同様1300年ほど続いているといわれている。

夕刻の小瀬湊。鵜匠を訪ねて鮎之瀬橋を渡る

 長良川の鵜飼いは、日本で唯一の御料鵜飼として皇室に保護されており、御料場は岐阜市の長良川鵜飼と、ここ関市の小瀬鵜飼の2箇所のみ。長良川鵜飼は観光色が強く華やかで、小瀬鵜飼は静寂の中で昔ながらの漁法が見られるとあり、双方ともに人気がある。鵜飼いが行われる時期は、毎年5月11日から10月15日までだ。

 鵜を操る「鵜匠(うしょう)」は、信長や家康など時の権力者の保護を受け、明治期からは宮内庁の直轄となって「宮内庁式部職鵜匠」という役職が与えられている。鵜匠は代々世襲制で、小瀬には3家の鵜匠が存在している。

宮内庁式部職十八代目鵜匠・足立陽一郎さん(撮影者:小林 淳)

 3家の1つ、足立鵜匠が営む「鵜匠天然鮎料理・鵜の家足立」を訪れると、築300年の素晴らしい屋敷が、かがり火に照らされて闇夜に浮かびあがっていた。本日の旅のメインは、こちらで現役鵜匠さんのお話を聞きながら、天然鮎料理と鵜匠お手製のどぶろくをいただくというものだ。鵜飼いがシーズンオフの今だからこその贅沢な計画である(普段の予約はグループ・団体のみ。今回は特別にOKをいただいた)。

築300年の鵜匠の家。もはや時代劇のセットである