2022年1月17日、長野県の八ヶ岳連峰天狗岳で高齢の男女3名が遭難。また、同じ日に北海道富良野市でスキー場のコース外(バックカントリー)でスノーボードをしていた男性3名も遭難と、雪山での遭難事故が相次いで報じられた。

 誰しもがこの美しいニッポンの冬を楽しむ権利をもっているわけだが、ここでひとつ考えてみたい。自分の大好きなスキーや登山をして、それを享受するからには、大切な家族、そして自分を守るためにしておきたいことがある。

 バックカントリースキーを安全に楽しむために、多くの方がガイドツアーに参加したり、滑走技術をはじめとする各種のスキルを磨いたりする。そうすることでリスクを回避し、そこから生じる被害を最小限に抑えたいと考えている。

 そうしてリスクヘッジする一方で忘れたくないのが、いざというときへの備えだ。「山岳保険」は、山で遭難したときに、捜索や救助に要した費用に対して保険金を支払うというもの。山岳保険を扱う会社の担当者に話を聞いた。

 「ひとくちにアウトドアと言っても、そこでの活動は多岐にわたっています。とくに最近では、冬はスキーをして、夏は山に登ったりクライミングを楽しんだりと、一人で複数のアクティビティを楽しむのも当たり前になってきました。そうした非日常の活動では、何が起こるかわかりません。たとえば雪山なら、十分な配慮をしていても、雪崩に巻き込まれてしまうこともあります。アクティビティに伴うリスクを理解すると同時に、万一への備えも考えて欲しいと思います」

 保険に加入した人の中には、「自分は構わないけれど、家族に経済的な迷惑をかけたくない」と話す人も多いという。バックカントリースキーに限らず、経験を重ねて、そこに潜むリスクを知れば知るほど、「楽しむうえでは万一もありうる」という覚悟も強くなる。しかし、家族も同じように「覚悟」ができるものだろうか。

 ツアーに向けて装備の準備しながら、天気予報を見て斜面の安定性を気にかけながら、大切な人の顔を思い浮かべてみる。備えは怠りないだろうか?

バックカントリ-ならではの景色も魅力のひとつ

■【一例:山岳保険会社の特徴】

●保険金額300万円
捜索や救助に要した費用に対して、最大300万円までの保険金が支払われる。警察や消防などの公的機関に救助されれば費用がかからないこともあるが、民間の遭難対策協議会などを頼った場合は、「人件費×人数×日数」がかかる。人件費の相場は3~5万円程度。過去の事例では、ほとんどが数万円から数十万円で対応できているというが、捜索が長引けばそのぶん費用も多くかかるということは知っておきたい。

ゲレンデ外でも大丈夫
遭難の原因、季節や場所、活動形態を問わずに補償してくれる。一般の保険では対応されないことも多い雪山(バックカントリー)でのツアーや雪崩遭難にももちろん対応してくれる。ただし、補償は捜索や救助費用のみ。損害や怪我・死亡に対する補償ではないので、通常の医療保険や生命保険、登山保険への上乗せと考えるのがいいだろう。

●保険料はリフト1日券より安い
年間の保険料は4000円。多くのスキー場のリフト1日券より安い金額で、手厚い補償が受けられるということだ。さらにこの保険はあらゆる山岳活動やアウトドア活動をカバーしているので、登山やクライミングなど、スキー以外のアウトドアアクティビティも安心して楽しめる。1ヵ月に換算すると、約333円だ。

●駆けつけ交通費や宿泊代も
救助要請が行われても、公的機関が動いたことで、捜索・救助費用がかからないというケースがある。そうした場合は保険金は支払われないが、「遭難・救助対応費用」として、定額5万円は支払われる。現場に駆けつける家族の交通費や宿泊費、救助にあたってくれた方へのお礼など、意外とかかる諸経費まで考慮されているのはありがたい。