北アルプスの立山連峰にそびえたつ剱岳(つるぎだけ)は、日本の一般登山道の中でも最難関に部類される山であり、多くの人が「いつかは登ってみたい」と、憧れを抱く山の一つだ。

 そんな剱岳にはどんな難所があり、どのような景色が見られるのだろうか。

 今回は、剱岳の登頂者しか見ることのできない絶景や難所ポイントを紹介していく。

■多くの登山者の心を惹きつける「剱岳」

岩峰は立ち並んだ刀のようだ

 日本百名山に選定されている剱岳は、富山県に位置する標高2,999mの山である。「岩と雪の殿堂」と呼ばれ、転倒・滑落などによる遭難事故も度々起こる。その難易度の高さから、新田次郎氏の小説であり映画化もされた『劒岳 点の記』(文藝春秋)の題材にもなり、登山家だけでなく多くの人から険しい山として関心を集めている。

 剱岳登頂のルートはバリエーションルートを含め複数あるが、最も人気があるのが「別山尾根ルート」だ。コースタイムがほかのルートよりも短いうえベースをとる山小屋が3軒あり、そこに宿泊し荷物をデポすれば、少ない荷物で剱岳に挑むことができる。

■剱岳を望むテント場から出発

深い谷にある剱沢キャンプ場

 別山尾根ルートの場合、夏場の繁忙期などを除けば、剱沢キャンプ場から剱岳頂上までの所要時間はおよそ4時間。剱岳を下山してそのまま登山口の室堂まで歩くことを想定すると、トータル13時間ほどの時間を要する。

 そのため出発時間は、朝の4時前後。剱岳のベースキャンプは、剱沢キャンプ場以外にも剣山荘・劔沢小屋があり、ピーク時は多くの人で賑わい落石事故も多発している。できるだけ早い出発が望ましい。

■13箇所もの鎖場を越えていく

難所には番号が振られている

 剱岳「別山尾根ルート」の鎖場(くさりば)は、全部で13箇所。鎖場とは、傾斜の急な岩場などで登り降りの補助となる、金属製の鎖が設置された場所のことを指す。

 それぞれの難所には看板が備え付けられていて、否応なく気が引き締まる。

●最初のピークの一服剱

序盤から急な鎖場が続く

 2つの鎖場を越えると現れる一服剱(いっぷくつるぎ)。標高2,500m以上の場所にある急な岩場を鎖を掴みながら進んでいく。一服剱を越えるとなだらかな道(コル)が出てくるため、休憩しながら歩くことができる。

●難所となる第5の鎖場

足元に十分注意を払って崖をトラバース

 最初の難所である第5の鎖場。幅が50cmにも満たない鉄の橋を渡り、鎖を伝って岩壁を20mほど水平に移動するトラバースをしながら進んでいく。ここはさらに足場が狭く、足を滑らせたら谷底に落ちてしまうため、一人ずつ慎重に進む。

●剱岳の核心部である最大難所「カニのたてばい」

登りルートの最大難所とされているカニのたてばい
約50mの岩壁を鎖一つで登っていく

 第9の鎖場は「カニのたてばい」とも呼ばれる剱岳で上り最大の難所ポイントだ。50mほど高さのあるほぼ垂直の岩壁を、鎖一つで登っていかなくてはならない。カニのたてばいは上り専用ルートのため、一度登ってしまうと後には引き返せない。