「釣れてるよ! しかも大きい魚(イワナ)が多いんだ」そんな言葉にのせられて長野県の姫川の支流、小谷村の奥地の深い沢へやってきた。

 実は釣りをするのは本当に久しぶり。一時期はテンカラ(※)にかなりハマって、あっちの沢、こちらの沢、夏場は足しげく渓に通ったものだが、なぜだか最近は足が遠のいていた。けれどこの夏、わたしの釣り欲はむくむくと頭をもたげてきていた。梅雨明けと同時にやってきた猛烈な暑さにウンザリして、源流の涼しげな流れが恋しくなっていたのかもしれない。

※ 日本古来の和式毛バリ釣り。竿と釣り糸、毛バリで構成されるシンプルな釣り方

■東西から姫川に流れこむ支流を狙う

ギラギラした真夏の太陽も、深い渓では優しく降りそそぐ

 姫川は白馬村・佐野地区の「姫川源流湧水」に端を発する。西には険しく聳える北アルプスからの清冽な流れ、東側からは深い谷から流れ落ちる水を集めつつ北上し、日本海へと注ぐ。国道148号線に沿って流れる本流には、イワナやヤマメ、ニジマスまでいるらしい。

 今回はその姫川支流、小谷村の深い谷間の上流部で釣りをした。下流部では漁協が魚を放流しているが、堰堤や滝に阻まれてここまで上がってくることはできない。きっと、自然繁殖を繰り返した野性味あふれるイワナたちが待っているに違いない!

姫川上流漁協:http://www.himekawa.org

■テンカラで渓を釣り上がる

シンプルな道具立てのテンカラだからこそ、テンポよく釣り上がりたい

 真夏の光は生い茂る木の葉にやわらげながら、谷間にやさしく降り注いでいる。標高の高い山の中だけど、夏真っ盛りのこの時期はうんざりするような暑さだ。水に入ると沢靴からじんわり沁みてくる流れの冷たさが心地いい。

 こんな気持ちいい渓で竿を振るだけでも癒される。とはいえ、やはり釣れてほしいのが乙女心。いや釣り人魂か? はやる気持ちをおさえつつ、めぼしいポイントに毛バリを打ち込んでいく。

スティミュレーター 。カワゲラを模しているものらしいが、イナゴにも見えてくれるかも

 道具立ては3mほどのテンカラ専用の振出竿に、天糸(道糸)とハリスを結び、その先に毛バリを付ける。テンカラはフライフィッシングに比べて、とてもシンプルで潔い。本来はテンカラ用の毛バリを使うのが正当なのだが、今回はフライフィッシング用のドライフライ(水面に浮く)を使ってみた。うっかり流れに落ちたイナゴに見えてくれそう。