アウトドアが好きなBRAVO MOUNTAIN読者の方々なら、お出かけの際は天気が気になるだろう。私は普段、登山・アウトドア分野のライターとして活動しているが、実は気象予報士の資格を持っている。昔は気象予報会社にも勤めていたけれど、今は趣味の視点からも天気を楽しむようになった。そんな私が、これからアウトドアで役立つ知識や、役には立たないかもしれないけれど「お天気って楽しい!」と思っていただけるような話をご紹介していきたいと思う。

■天気は4次元の世界

空には、いろんな高さにいろんな形の雲が浮かんでいる

 このサイトを見てくださっている読者の方々は、アウトドアにお出かけの際、天気がとても気になると思う。連載初回で、まず皆さんにお伝えしたいのは、空を見たり、風を感じたりすることの楽しさと大切さだ。

「気象」「天気」というと、天気図の勉強をイメージする人も多いかもしれないが、実際の気象現象は、天気図のように2次元でなく、風や地形が織り成す3次元(立体)に、時間という要素が加わった4次元(経過と予報)の世界で起きている。

 だから、いきなり天気図を見るよりも(見てもいいけど)、まずは空を見ながら「あの雲はどうしてあそこに浮かんでいるのかな」「急に風が冷たくなったな」などと、五感のセンサーを働かせて空を眺め、感じてみてほしい。自然からのメッセージを受けとめることが、天気に詳しくなる第一歩だと思う。

■楽しい! 雲の観察

 私は、昔から雲を見るのが好きだった。登山をする人は、花や植物が好きな人や、動物が好きな人などいろいろだが、私が好きなものは雲だった。刻一刻と形を変え、流れていく雲が、何ともいえず気ままで、見ていると気分が良かった。

山の風下側にできる「吊るし雲」

 個人的な話で恐縮だが、今回は私の好きな雲を紹介しよう。まずは「吊るし雲」。山から少し離れた場所にできるのが特徴だ。上から吊るされているように見えるというのが名前の由来らしい。小さいものだと風船やUFOっぽくて可愛らしいが、大きなものは迫力があり、自然の壮大な造形美を感じる。

山頂に覆いかぶさるような形の「笠雲」

 もう一つ、山頂に覆いかぶさるような「笠雲」。吊るし雲と同様、山に現れる雲で、とくに富士山など独立峰に多く見られる傾向がある。地表面は真っ平らではなく、山や谷などによって凸凹がある。凸凹があることで、空気の流れに変化が生まれる。このため山の付近には雲が発生しやすいので、登山は雲の観察にぴったりだと思う。