栃木県と福島県の県境に連なる那須連山。日本百名山にも数えられる那須岳の主峰・茶臼岳(ちゃうすだけ・1,915m)は、火山の荒々しい景観が広がる山だ。秋になると、周囲の山々が鮮やかに色づき、岩肌との美しいコントラストを見せる。

 今回は那須ロープウェイを利用して、茶臼岳から朝日岳(あさひだけ・1,896m)へ向かい、隠居倉(いんきょぐら)を経て、歴史ある秘湯「三斗小屋温泉(さんどごやおんせん)」の煙草屋旅館に宿泊。翌日は姥ヶ平(うばがだいら)の紅葉を楽しみながらロープウェイ山頂駅へ戻る1泊2日の周回ルートを紹介する。

■ロープウェイで一気に秋の那須岳へ

茶臼岳から望む姥ヶ平の紅葉
茶臼岳から峰の茶屋跡避難小屋を見下ろす 

 那須ロープウェイ山麓駅は、東北自動車道・那須ICから車で約35分。ロープウェイを利用すれば約4分で茶臼岳の9合目まで一気に上がることができ、山頂駅から茶臼岳山頂までは約45分。

 この日は10月上旬、午前8時ごろに那須ロープウェイ山麓駅に到着。ICから山麓駅へ向かう途中、標高とともに赤や黄色に染まった木々が目立つようになり、期待が高まった。午前8時半過ぎにロープウェイに乗り込むと、辺りは急に霧に包まれ真っ白に。山頂駅で降りると冷たい風が吹きつけ、慌ててウインドシェルの下にフリースを重ね、手袋を装着した。

 山麓では半袖、Tシャツの服装でも過ごせるほどだったが、秋の山の肌寒さにまず驚いた。冷たい風が吹くと体が冷えるため、防寒着や手袋はすぐに取り出せるようにしておきたい。

 歩き始めは、道幅の広い整備された階段が続くので、呼吸を整えながらゆっくりと進む。茶臼岳山頂には石造りの祠があり、多くの登山者でにぎわっていた。ひと息ついたところで、朝日岳へ向かう。茶臼岳山頂から下り始めると風も穏やかになり、眼下には姥ヶ平の紅葉がパッチワークのように広がっていた。色鮮やかな紅葉と荒々しい岩肌が織りなす景色も印象的だ。

 峰の茶屋跡避難小屋までは下りが続き、茶臼岳を目指す登山者とのすれ違いも多かった。狭い場所では登り優先を基本としつつ、状況に応じて声を掛け合い、安全に歩を進める。

■火山の稜線を越え、歩いてしか行けない秘湯へ

隠居倉へ向かう途中で振り返る、歩いてきた稜線
三斗小屋温泉手前、登山道脇に現れる源泉

 峰の茶屋跡避難小屋で少し休憩をとる。体も温まりフリースは脱いだが、風が吹き抜けるためウインドシェルは着たまま出発。朝日岳まではゴツゴツとした岩場が続き、約30分進むと片側が切れ落ちた急な岩場や、鎖が設置された場所が現れる。高度感もあるため、足元を確認しながら慎重に進みたい。

 鎖場を越えた先の分岐から約10分で朝日岳山頂だ。茶臼岳から歩いてきた登山道や、幾重にも連なる山々が見渡せる。

 分岐まで戻り、今度は熊見曽根(くまみそね)を経由し、隠居倉を目指す。隠居倉周辺では雲海が広がり、振り返れば歩いてきた山々や稜線を一望できた。この辺りから膝丈ほどの笹が増え、登山道は一人が歩ける程度の細さになる。景色に気を取られすぎないよう気をつけて進んだ。

 三斗小屋温泉へ近づくと、登山道脇に源泉が現れる。赤茶けた地面から湯けむりが立ち上る光景を過ぎ、鳥居が見えてくれば、この日の宿「煙草屋旅館」まではもうすぐだ。