10月下旬、北アルプスの奥穂高岳を登りに行くことにした。登山口の上高地は例年そのころが紅葉・黄葉の見頃だが、涸沢あたりではとっくに終わっている。でも、それでいい。ほとんどの山では紅葉の時期が終わると、冬が徐々に近づいてくることもあり、登山者の数は少なくなる。
今回の目的は、「上高地~涸沢~奥穂高岳」という夏から秋にかけては大勢の登山者でにぎわう超人気コースで、静かな山旅を楽しむことだ。
■横尾で「お風呂」に浸かってのんびりと
今回の行程は2泊3日。1日目は上高地に着くのが昼ごろのため、横尾山荘泊まり。2日目は横尾から涸沢を経て、白出のコルの穂高岳山荘まで一気に登る。標高差は1,350m。そして、3日目に奥穂高岳を往復し、そのまま上高地まで下山する、というプランだ。
上高地はちょうどカラマツの黄葉が見頃を迎え、多くの観光客でごった返していた。今日は横尾までほぼ平坦な道を3時間ほど歩くだけなので、店に入ってゆっくりと昼ごはんを食べようかとも思ったが、どこも大混雑だった……。それにしても外国人の多いこと、多いこと。
河童橋のたもとからは、奥穂高岳や前穂高岳をはじめとする穂高連峰の稜線が、秋晴れの空の下にくっきりと見渡せた。
「よし、雪はついてなさそうだな」
稜線の様子を自分の目で確認し、少し安堵する。今回の山行を計画するにあたって、最も心配していたのが「雪」だった。北アルプスの3,000mの稜線上では、例年10月初旬~中旬ごろから雪が降り始める。念のため、積雪や寒さに対応できる装備(アイゼン、防寒着など)は持って来たが、うっすらと新雪が積もったり、部分的に凍結したりしている岩稜は非常に歩きにくいし、緊張を強いられる。積雪がないに越したことはない。
事前に確認した天気予報でも数日間は晴れ、または曇り予報で、山にいる間に積もるほどの雪が降ることもないだろう。
河童橋から明神、徳沢へと、通いなれた道を行く。空気はからりと涼やかで、木々の間から差し込む秋の日差しもやわらかく、なんてことはない林道歩きも心地がいい。
3時間ほど歩いて、横尾に到着。これまで北アルプス南部には何度となく足を運んできたが、横尾山荘に泊まるのは実は初めて。山小屋でありながら「お風呂」があり、汗をさっぱりと流したあと、湯船で手足をのばしてのんびりとくつろぐことができた。なんという贅沢!