トロッコ電車に揺られて、V字に切り立つ黒部峡谷を駆け抜ける「黒部峡谷鉄道」。この路線は本来、富山県黒部市の宇奈月駅から欅平駅までの運行なのだが、2024年の元旦に起きた能登半島地震の影響により、現在は途中駅の「猫又駅」での折り返し運行を行っている。
実はこの駅は、普段は一般客が降りることのできない工事関係者専用の駅。そして、この幻の駅で下車できるのは、今年の9月30日までとなる。今しか体験できない特別なトロッコ電車の旅へ、この夏はぜひ現地へと足を運んでほしい。
■絶景が連続する片道50分の旅
黒部峡谷鉄道が駆け抜けるのは、立山連峰と後立山連峰の間を黒部川が流れる日本屈指のV字峡谷だ。沿線には手つかずの大自然が広がり、春の柔らかな若葉や新緑は、夏に向けて徐々に深い緑へと色を変えていく。
峡谷に架かる鮮やかな真っ赤な鉄橋やエメラルドグリーンに輝くうなづき湖など、SNS映えする絶景スポットも満載だ。車窓の向こうに次々と現れるダイナミックな景色を眺めているうちに、猫又駅までの片道約50分の旅はあっという間に過ぎていく。
■猫又駅に下車できるのは今だけ!
日本で唯一、駅名に「猫」がつく「猫又駅」。普段は発電所やダムの工事関係者しか利用できないこの駅が、現在は期間限定で一般の観光客向けに開放されている。下車できるのは今年の9月30日までとなっており、まさに今しか体験できない貴重なチャンスだ。
猫又駅での滞在時間は20分間。人気の展望台や特製フォトフレームなどの撮影スポットがあり、かわいい猫の肉球スタンプやオリジナルグッズの販売も行われている。また、もともと工事関係者専用の駅ということもあり、重厚感ある重機たちを間近から眺めることができるのもこの駅の魅力のひとつだろう。
さらに、今年は猫又駅の乗降が最後の年になることから、猫又駅オリジナルキャラクター「またにゃん」の占い付き大型パネルが登場予定。パネルにあるQRコードを読み込むとタロット占いが楽しめる。「またにゃん」と一緒に記念撮影をして、その日の運勢も占えば、特別な思い出になること間違いなしだ。
■創立55周年記念ヘッドマークが登場
今年、黒部峡谷鉄道は創立55周年という節目を迎える。これを記念して、55周年の記念ヘッドマークを付けたトロッコ電車が運行中だ。沿線では昨年から、人気キャラクター「またにゃん」のヘッドマークを付けた車両が走っているが、今年はこれに加えて55周年記念プレートを装着した、2タイプの車両が同時に運行されている。
また、7月25日の1日限定で、特別ブースにて55周年記念うちわまたは記念缶バッジをプレゼントする企画も実施。うちわは1,555名、缶バッジは555名限定の記念品となるため、この日に訪れるならぜひ早めに手に入れたい。
■“こども駅長”や体験型イベントを親子で楽しもう
黒部峡谷鉄道で大人気を誇るファミリー向けイベントが「こども駅長の日」だ。小学生を対象としたイベントで、駅員の制服と制帽を身にまとい、宇奈月駅の駅長業務を体験することができる。現役駅長の指導を受けながら、改札口で乗車チケットにハサミを入れる「入鋏(にゅうきょう)」や乗客を出迎えるマイクでのアナウンス、窓無しの車両の座席に落防止の鎖をかける作業、発車ベルを鳴らす合図など、本格的な鉄道の仕事を体験できるのが魅力となっている。さらに、参加した子どもはトロッコ電車の往復乗車が無料になる特典も付いている。
2026年夏の開催は、7月26日と8月23日の計2回。各回定員2名で、応募多数の場合は抽選となる。7月開催分はすでに募集を締め切っているが、8月開催分は8月7日まで応募を受け付けているため、気になる方は早めのチェックがおすすめだ。
子どもが楽しめる夏のイベントに参加して、親子でトロッコ電車の旅を満喫しよう!
また、7月下旬からは子ども限定の企画として「ワクワク!ドキドキ!ゴーゴートロッコチャレンジシート」を使ったイベントも予定されている。トロッコ電車の旅を楽しみながら、シートに書かれたミッションに挑戦し、「できた(クリアした)」たびに項目を埋めていく仕組みだ。そして、すべての項目が埋まるとノベルティグッズがゲットできる。
シートを埋めるごとに「できた!」が増えていくので、きっと子どものやる気や自信もぐんぐんアップするはずだ。この夏は、そんな子どもの成長を育む鉄道旅へ、親子で出かけてみるのもおすすめだ。
■トロッコ旅を彩る駅弁もゲット!
トロッコ電車は乗車中の飲食がOK。旅の起点となる宇奈月駅の周辺や構内では、地元の名物にこだわったお弁当屋や売店が揃っているので、ここで鉄道旅のお供を購入していくのもおすすめだ。駅のすぐ近くに店舗を構える「有磯きときと庵」では、とんかつや豚の生姜焼きといった定番メニューのほか、ますの醤油漬けを使った俵寿司(たわらずし)や白えびの天ぷら、ホタルイカの甘露煮などの富山名物がぎっしり詰まった「黒部峡谷 宇奈景色」などを販売。お弁当は事前予約制となっている。
また、手軽に立ち寄れる駅構内の「宇奈月売店」も見逃せない。こちらでは、富山のブランド豚「名水ポーク」や、バイ貝、白えび、ホタルイカといった海の幸を取り入れた「とやま弁当」が手に入る。さらに駅構内の売店では、炙りサーモン、トロサーモン、定番のますが2切れずつ入った「押し寿司3種セット」を用意。こうした富山ならではのお弁当を味わいながら、カタコトとトロッコ電車に揺られて旅するのも楽しさのひとつだろう。
■2026年10月1日からついに全線再開へ!
7月初旬、黒部峡谷鉄道では、復旧工事の進捗にともない、2026年10月1日から宇奈月駅~欅平駅までの全線運行を再開することを正式に決定した。10月1日以降の詳しいダイヤや運賃などの情報については公式サイトに掲載されており、予約方法についての案内も載っている。
そして、2024年から続けていた宇奈月駅~猫又駅間を折り返す限定ルートも2026年9月30日でいよいよ終了となる。通常は降りられない「猫又駅」で下車できる機会は以後なくなってしまうので、幻の駅に降り立てるのは、この夏が本当にラストチャンスだ。この貴重な機会を逃さず、ぜひともこの夏は黒部峡谷へと足を運ぼう。