全国各地の田舎で過疎や高齢化が進んでいる理由のひとつは、“仕事がないこと”と言われている。しかし、たとえ田舎でも自然や文化といった観光資源さえあれば、観光業が成り立って仕事が作れるのではないか。
実際に10年前に過疎の村に移住をし、地域の資源を生かした観光業に取り組み続けてきた筆者の意見とは?
◼️優れた資源だけでは、観光は成り立たない
私が10年間で感じた答えから言うと、いくら自然や文化といった“ここにしかない観光資源”があっても、それらを活かすことのできる“事業者”がいないと観光業は成り立ちません。
観光資源を掘り起こし、事業に成長させるためには時間がかかります。さらに、せっかく数年がかりで観光資源を形にしても、関わるメンバーのライフスタイルの変化や、他の地域活性化事業に人員を割かれたりして活かしきれないことになることも少なくありません。解像度をより高くして見ると、村人の中でも積極的に観光や地域活性化に取り組む人もいれば、自分の生活だけで精一杯の人もいます。さらに、子どもの成長や家族の高齢化により、精力的に取り組みたくても時間や手が足りなくなることもあるのです。
せっかくの資源を活かすためには、まず自治体は観光や移住だけに力を入れるのではなく、その間にある“エコツーリズムや関係人口”という視点を持つことも大事なのではないでしょうか。
“エコツーリズム”とは、その地域にしかない価値を掘り起こし、観光資源に育てることを指す言葉です。“関係人口”とは、住んでいる人口を含めた“地域に関わる総人口”を指す言葉です。観光に訪れる人、地域の物産を定期購入する人、仕事や支援活動でその地域に関わる人……と、関わりしろの度合いによりグラデーションになっているのが関係人口の特徴。観光業から見れば、SNSなどでその地域に興味を持った人に実際に訪れてもらい、最終的には移住を考えてもらうまで関係を深めることがゴールです。
◼️いきなり直接呼び込むばかりが吉ではない
例えば、私の住む和歌山県・龍神村の場合には、“幻の熊野古道奥辺路の古道再生”という観光資源があります。そこで、我々は道普請(登山道整備)をアクティビティとして捉えた観光ツアーを組み、村人と一緒に登山道整備で汗をかき、交流を深めるエコツーリズムを実施しています。登山道整備で森に手を入れる中で森林のもつ森林浴や保水機能を体験してもらい、村の主産業である林業にも興味を持ってもらい、龍神村ならではの体験をしてもらおうという狙いです。
このように、その地域の自然を活かした、その地域にしかない魅力を体験できるのがエコツーリズムの醍醐味なのです。
龍神村の観光業の課題は、大都市圏からアクセスが悪いことです。しかし、近隣には高野山や熊野古道といった有名な観光地があります。また、田辺市や白浜町という中核都市もあります。こうした近隣中核都市と連携して、“ついで観光で足を延ばしてもらう”ことも大切です。それをきっかけにして、次はゆっくりと訪れてもらえたら良いのです。
アクセスが悪い、車必須などのデメリットを踏まえても訪れたい魅力を放てるまでに観光資源を育てるには時間がかかります。いきなり直接呼び込むばかりが吉ではありません。田舎で観光資源を育てていくには、気長に取り組む時間と気持ちの余裕が必要だと思っています。