■シマリスが走り回る癒しの登山道

 下山は、登ってきた道を「ブナの木権現」の分岐まで戻り、牛伏川(うしぶせがわ)の沢沿いを下るルートへ。この沢沿いのルート周辺がシマリスの生息地になっている。

 筆者の経験では、沢沿いルートの標高1,200〜1,500m付近でシマリスをよく見かける。春は冬眠明けのシマリスが、エサを求めて忙しそうに動き回っている。落ち葉が「カサカサ」と鳴る音や、「チッチッ」という高い鳴き声が聞こえたら、周囲をそっと観察してみよう。

 姿が見えなければ、斜面に生えたハシリドコロなどの草の葉の陰を覗いてみてほしい。葉に隠れて花をもぐもぐと食べるシマリスを見つけられるかもしれない。頬袋を膨らませて芽吹いたばかりの植物や木の実を運ぶ姿は、悶絶級の可愛さだ。

 ちなみにシマリスが食べているハシリドコロは毒草で、名前の由来は「食べた人が錯乱して走り回る」からとも言われている。

 ここで見られるシマリスに限らず、野生動物への餌やりは絶対禁止である。またシマリスを観察するために登山道を外れて山に入る行為も、動植物保護や災害リスクの観点から絶対しないようにしてもらいたい。

登山道周辺に生息するシマリス
ハシリドコロの花を食べるシマリス

 シマリスたちに別れを告げて、牛伏川砂防ダム付近まで来ると、明治時代に作られた「フランス式階段工」と呼ばれる美しい石積み堰堤や、沢沿いに咲くニリンソウなどの花々が楽しめる。変化に富んだ、歩きごたえのあるコースだ。

沢沿いに咲くニリンソウ
新緑と牛伏川のフランス式階段工 

■生命の息吹を感じる旅へ

 厳しい冬を乗り越えた花々、圧倒的スケールの白銀の連峰、そして春を喜ぶシマリスたち。ゴールデンウィークの鉢伏山は、まさに「生命の輝き」を五感で感じられる場所だ。

 なお、標高2,000m近い山頂付近は風を遮るものがなく、真冬のような冷たい風が吹くこともある。麓は暖かくても、防寒着や手袋などは忘れずに。この春、生命の息吹を感じるの名山「鉢伏山」へ出掛けてみてはいかがだろうか。

 

交通アクセス
 鉢伏山へは近隣に駅やバス停がないので車での訪問がスムーズ。牛伏寺砂防ダム下の河川敷沿いにある駐車場までは長野自動車道・塩尻北ICから約15分。登山口の前にある駐車場は、牛伏寺参拝者専用なので使用禁止。
 5月以降は鉢伏山荘まで車で行くことも可能。鉢伏山荘までは長野自動車道・塩尻北IC、中央道・岡谷ICから約1時間。林道の冬季閉鎖状況は松本市や塩尻市のホームページで最新情報を確認してほしい。

●【MAP】鉢伏山

牛伏寺砂防ダム~鉢伏山周回コース所要時間
牛伏寺砂防ダム(0:00)→ ブナの木権現(2:20)→ 鉢伏山荘(3:20)→ 鉢伏山(3:35)→ 鉢伏山荘(3:45)→ ブナの木権現(4:35)→ 松建小屋(5:35)→ 牛伏川いこいの広場(6:05)→ 牛伏寺砂防ダム(6:20)
歩行距離:約13.0km
累積標高差:登り 1,116.7m、下り 1,116.7m
合計所要時間:6時間20分