登山といえば、青空と絶景。けれど、雨の季節にしか味わえない「山の表情」があることをご存知だろうか。梅雨時期の登山は天気や装備に気を使うが、その手間を越えた先に、しっとりと濡れた苔の森、霧に包まれた幻想的な道、雨音しか聞こえない静寂な時間が待っている。まるで、山が自分だけに語りかけてくるような感覚に包まれるのだ。

 今回、長野県北部にある「志賀高原」の田ノ原湿原や一沼、しなの木ロード、蓮池などのゆるやかな山道をのんびりと歩いてきた。

■雨に濡れて変化するサンカヨウの花

森の主のようなしなの木

 一歩、踏み入れると、雨に濡れた植物たちがいきいきと輝いている。高山植物の可憐な花たちは森のジュエリーだ。志賀高原のしなの木ロードを散策すると、大きなしなの木の麓に「サンカヨウ」の花が咲く。

偽りなき色のサンカヨウ

 雨が降っている時にしか見ることのできない「山の秘密」のような表情を見せてくれる。雨に濡れると白い花びらがまるでガラス細工のような透明な姿へと変わる。「まるで妖精がひっそりと置いていった宝石だ」と感じてしまう。

■雨の日の森歩き

レインウェアを着てハイク

 雨の季節の森歩きは、ぬかるんだ道、濡れた岩や木道、確かに気をつけることは多い。

 レインウェアを着て視界も狭いが、人の少ない山道を、自分だけのペースで歩き、足元の宝石たち(高山植物)をゆっくり見ることが楽しい。この時間は何ものにも代えがたい贅沢だ。