神奈川県南足柄市、足柄山地に属する矢倉岳(やぐらだけ)。標高は870mと低山の部類だが、山頂部は立木のない草原状になっており、視界を遮るものがない。そのため、壮大な富士山をはじめ、箱根山地や丹沢山地、相模湾などを見ることができる。
また、山容も特徴的だ。お椀を伏せたような丸い形は、周囲からでもわかりやすく親しみやすい。この独特の形状が、足柄峠を見張る櫓(やぐら)に例えられ、「矢倉岳」という名の由来となったと言われている。
さらに矢倉岳は、約115万年前の噴火によるマグマが冷え固まり隆起して形成された山で、地質学的に極めて珍しいという特徴も併せ持つ。
冬の厳しい寒さが和らぐ頃、矢倉岳周辺には梅や桜、ミツマタが咲き、美しい景色を堪能できるようになる。
暖かさを感じられる3月から4月にかけて、春の香りに包まれる矢倉岳へ出かけてみよう。
■地蔵堂バス停から矢倉岳のピストンコース

●この山の登山口、または最寄り駅へのアクセス
矢倉岳の登山口へは、電車とバスの両方でアクセスが可能だ。電車の場合、小田急線新松田駅から箱根登山バスに乗り約40分。終点の地蔵堂(じぞうどう)で下車する。
マイカーの場合は、地蔵堂バス停のすぐそばにある無料駐車場を利用しよう。東名高速道路・足柄SAに接続する、足柄スマートICで高速道路を降り、県道365号を約30分進む。駐車場の収容台数は30台分ほどあるが、花の咲く登山シーズンには混雑が予想されるので、早めの到着を心がけよう。
●標準コースタイム
【地蔵堂バス停から矢倉岳ピストンコース】所要時間
地蔵堂バス停 (0:00) → 山伏平 (1:40) → 矢倉岳 (2:10) → 山伏平 (2:30)
→ 地蔵堂バス停 (3:35)
歩行距離:約5.7km
累積標高差:登り 596m、下り 596m
合計所要時間:3時間35分
■低山と侮るなかれ! 梅畑と富士の絶景を楽しめる矢倉岳登山

●地蔵堂バス停から登山口、そして山伏平へ
バス停を降りたら、美味しそうなお蕎麦屋さんの脇を通り、登山口へ向かう。バス停付近にはドリンクの自動販売機も設置されている。
登山口には、ハイカーを出迎えてくれる梅畑がある。白い梅の花が一斉に咲いている様は圧巻で、つい足を止めてしまう。
さて、登山口から先へと進むと、最初の5分ほどで分岐点に到達。ここから本格的な登山道の始まりだ。登山道はなだらかで、アップダウンも少ないため歩きやすい。温暖な気候になるにつれ、さまざまな山野草を楽しみながら歩くことができる。
途中、小川を渡る渡渉ポイントがあるが、大きくて平らな飛び石がたくさんあるので、足場に困ることはないだろう。ただし、前日が雨だったりすると、沢の増水の恐れもある。雨のあとは、山行計画の見直しも含めて再考が必要だ。
登山開始から1時間40分、見晴らしのいい場所にベンチも備わっている。ここが山伏平(やまぶしだいら)だ。矢倉岳山頂までは、まだ20分ほどの道のりが残っているので、休憩していこう。
