■美しいブナの森を歩きながら、自然観察を楽しむ

ブナの「樹幹流」を観察する。葉や枝で受けた水が幹をつたって流れ下りる現象で、水が根元に集まっていく

 今日のコースは、黒姫高原の森の中に延びている中部北陸自然歩道。中部北陸8県にまたがる長大な自然歩道で、黒姫山麓にはブナやミズナラなどの豊かな森が広がっている。

 しばらく降雪のない日が続いていたため、自然歩道の雪は減り、スノーシューなどのトレース跡が付いていた。

 「本当はふかふかの新雪のほうが歩きやすかったんだけどね。踏み固められた場所より、新雪を選んで歩くといいよ」というアドバイスに従って、なるべくふかふかの新雪を行く。

 シールを滑らせられるので、たしかにスノーシューよりも移動が速い。また、シール登高に慣れていれば、けっこうな斜面も登れる。シールの長さが短いため、荷重が前すぎたり後ろすぎたりするとシールが効かなくなるので、真ん中に荷重することが歩きや登りのコツだ。

 自然ガイドである晴ねえは植物にも詳しい。ときどき足を止めて、落ちている樹の実や葉について説明してくれる。これはシナノキ、こっちはサワグルミ……。「ブナの幹には“樹幹流”と呼ばれる水がつたっている様子が見られる」とか、「葉っぱが大きい樹は、冬芽が付く間隔が広い」などと説明を聞いていると、冬眠中のように見える森が急に生き生きと見えてくるから不思議だ。

ヤマブドウの枝(蔓)は何かに絡まりながら成長する。上部でしっかり絡まれば、下部の枝を落として垂れ下がるような形状になる

■森の中を自由自在に移動できる解放感

慣れないうちは緩いラインで。滑れなければ歩いてもいい

 「ちょっと道から外れようか」と、晴ねえが森のなかへ入っていく。私も後に続いた。トレースがなくなり、パウダーではないけれど、軟らかい雪が積もっている。でも、このスキーなら浮力があって、樹間が狭い場所でも取り回しがラク。ウォークモードや滑走モードの切り替え作業、シール着脱作業などがないシンプルさもいい。

 目の前に現れた短い斜面を、晴ねえはスイ~ッと滑っていく。私もおそるおそる、へっぴり腰で斜面に突っ込むが、次の瞬間、見事に転倒。雪まみれになって、思わず笑ってしまった。

 「怖かったら、斜面を斜めに歩いて降りてくればいいよ」と言われたが、根性で滑走に挑戦する。七転八倒を繰り返すうちに、少し慣れたのか、滑ることができるようになってきた。「おっ、上手くなってきたじゃん!」と晴ねえが褒めてくれる。おぼつかないけれど、ただ滑れるということがこんなにも嬉しいなんて新鮮に思える。正しいポジションに乗ること、足首や膝などの関節を柔らかく使うことが滑りのコツだ。

 「斜面を滑ってもいいし、歩きながら降りてくることもできる。スキーができる人もできない人も楽しめるのがいいよね」と晴ねえが言った。

緩いアップダウンが連続するような場所では「SNOW HIKE」が大活躍