■他の小屋の皆さんはどうしているんだろう?
例えば、せっかくの休みでも天気が悪くて小屋に留まる場合、近所の散歩、筋トレ、歴代の小屋番が置いていったボードゲームで遊ぶ、というのもよくある話。それから、ひたすら漫画を読んだりね。結構漫画を置いている山小屋って多いのだ。ちなみに、私はこもれび山荘時代、同僚の所有するキングダムを貸してもらい読み始めてから、今では欠かさず新刊を購入している。
わりと麓に近い山小屋だと、街に繰り出して夜の街に飲みに行く人もいた。下山して映画館へ行ったり、散髪をしたりして、リフレッシュ。山小屋勤務のために、力を溜める時間も重要だろう。
数日間のまとまった休暇がとれるときには、山から下りて、また違う山を歩きに行く人もいる。私の友人は山から下りたら、恋人と登山口で待ち合わせして、縦走デートに行っていた。ちょっと、いや、かなり羨ましい休日の過ごし方だよね。
■光岳小屋の休日は天のみぞ知る!
さて、光岳小屋の話をしよう。アルバイトで入ってくれるスタッフの休日は、小屋から離れて散歩に出かけたり、お昼寝をしたり、本を読んだりさまざま。狭い小屋なので、小屋の中にいてはリフレッシュする、というのが結構難しい。あるスタッフから、縦走するために10日間の休みが欲しいと申し出があったときには、私は大賛成した。スタッフにも、南アルプスの山域を歩いてほしいし、お客さんをお迎えするのに必要な経験だと思うからね。
シーズン中、オーナーの私には基本的に休日はなくて、台風の日でお客さんがいない悪天候の日が休日代わりになる。昨年は、8月末のノロノロ台風のおかげで休日がとれたので、台風通過を待つ間、小屋の中でのんびり過ごした。
薄暗い小屋に雨音と風の音。寝たり起きたりしながら、お菓子をぽりぽりしたり。小屋開けから駆け抜けた日々を振り返った。ジメエ〜とした小屋の空気の中、軽やかな何かがほしいとき、私はよくポップコーンを作りたくなる。よく量を読み間違えてフライパンから爆発させるのだけど、それもまた休みっぽくていい。
半端な時間のお休みは、少し小屋から離れたところまで散歩に出たり、お気に入りの場所で日向ぼっこをするのが好きだ。毎日を過ごす小屋が居心地の悪いわけではないけれど、小屋から少し離れると、急に一人だけの時間。気持ちの整理がついたり、新しい発見があったりする。山小屋の仕事って、意外と小屋の屋内で過ごす時間が長いので、陽に当たりたくなります。日向ぼっこ、結構大事。気持ちが前向きになるよね。
振り返ってみると、自分が休日をどう過ごしたか、意外によく覚えていたことに驚いている。たくさんの休日を過ごしてきた。山で、雨の小屋で、違う山で、一人で、大事な誰かと一緒に、ひとつひとつが大切な思い出として、引き出しの中に仕舞われているように思う。普段はしまったままなのだけれど、いつだって私の中にあって、新しく積み重なる思い出とは一味違う特別なものだ。その思い出は今までの私を形作ってきたもので、これからの私も作っていく。