■さらなる快適睡眠を求めてシーツを導入

徐々に整ってきた山小屋内。今日も元気にお客さんをお迎えします

 思い返せば、皆さんの小屋での過ごし方や利用方法を観察し、どうしたらより居心地がよくなるかの答えを探して、形を変え続けてきた3年間でした。

 今年はベッドにシーツを導入しました。「え! 今までなかったの?」と驚かれるでしょう。営業初年度から、感染症対策の観点からベッドにマットレスというシンプルなスタイルで営業してきたのです。小屋で使っているマットレスは防水カバーなので、毎日お客さんをお見送り後、拭き掃除とアルコール消毒で毎回リセット。しかし、防水カバーに直で横になるので、寝返りなど体勢を変える時は少しゴアっとするのが気になってはいました。

 街の宿のように、毎日リネン屋さんに交換をお願いしたり、洗濯するというのは難しいけれど、シーツを購入しよう。ベッドメイキングは、ホテルや旅館でアルバイトをしていたのでお手のもの。できるだけ清潔にお客さんを迎えたい。お掃除は念入りに。こんなちょっとしたことでも、今までやってきたことが繋がり、役立つ瞬間がある。今より若かった私、どこかいつも不安だった私に「大丈夫だよ」と声をかけたい。人生、無駄なことってなにもないのです。

シーツを丁寧に裁断してくれたお姉さん

 話が逸れてしまいました。このベッドシーツ、今となっては「こうしてずっとここにいましたよ?」とでも言うように、違和感なく馴染んでいますが、山にやって来るまでにはドラマがありました。

 昨年のオフシーズン、「布といえば繊維街!」と思い立ち、日暮里の布屋さんを歩き回って決めたものなのです。見て触って、これって決まったのはインド綿の生地でした。幅もベッドサイズに合うし、長さは丁度18枚分とれる。シーツって直接肌に触れるものだから、肌触りの良い気持ちのいいものを選びました。

 荷上げ用のヘリは川根本町から飛ぶので、役場に郵送してもらう手続きをしました。しかし、荷上げ当日、そのシーツの包みをブルーシートと思い込み、なんとヘリに乗せ忘れてしまったのです! 

 ブルーシートの包みだと信じて疑わなかったので、荷上げしていないことに気がつくのもの遅かった。営業開始の4日前、麓にある包みがシーツだとやっと気づき、本当に情けなくなりました……。包みを開けて確認すればよかっただけのこと。本当にヤンなっちゃう。

■今回のピンチにも救世主が登場!

歩荷してくれた遠山さんと。いやあ、重かったですね。ありがとうございます

 今回の小屋開けを手伝いに来てくれて、「何かあったらまた声かけてくださいね」って気遣ってくれた遠山さん。彼を頼って、歩荷してもらうことになりました(遠山さんは、以前水道が壊れた時に新しい逆止弁を背負ってきてくれた方で、今ではもう気心知れた仲。連載vol.35参照)。まさか、こんな短期間で、またテカリに来てもらうことになろうとは。

 この日は、昨年お客さんとしてきてくれた木曽のお姉さんがお手伝いしてくださり、一緒にベットシーツの長さを測って裁断し、ベッドメイキングをしてくれた。この山で出会ったたくさんの方々に甘えて、親切をいただいて。なんとかおかげさまで、より温かく、寛げる山小屋空間になってきています。