常念岳(じょうねんだけ・標高2,857m)は、百名山の一座に名を連ねる北アルプスの山だ。日照時間の長い時期であれば日帰りも不可能ではない山だが、今回は北アルプスの山の上で夜を過ごすからこそ普段は見ることのできない魅力を紹介したく、1泊2日で登るプランを紹介する。

■川を流れる音を楽しみながら登る「一ノ沢」からのルート

一ノ沢沿いに延びる登山道。川の音がBGMとなり、涼感を感じながら登ることができる

 紹介するルートは「一ノ沢登山口(いちのさわとざんぐち)」から登るルートだ。常念岳山頂までの所要時間は約5時間5分、標高差は1,500mを超えるため、体力を要するコースだが、危険箇所は少なく、北アルプスでも挑みやすいルートだ。登山道沿いに一ノ沢が流れ、川の流れる心地よい音を聞きながら山頂を目指す。

●ルートマップ

国土地理院地図に筆者が加工

■たどり着いた常念乗越から広がる大パノラマに感動

 一ノ沢登山口から常念乗越(じょうねんのっこし)までは約3時間50分。道中のほとんどが樹林帯となり、眺望が望める箇所は少ないが、標高が上がると一ノ沢沿いから安曇野の町を望むことができる。常念乗越までは長い区間なので、疲労を感じる前にこまめに休憩をとりながら登りたい。

川沿いは体感でも涼しさを感じられ、夏の暑い時期は心地よかった

 一ノ沢を何度も渡渉しながら高度を上げ、標高が2,000mを過ぎたあたりの胸付八丁(むなつきはっちょう)の区間は勾配はさらに急になる。

 胸突八丁とは、物事の一番苦しい時や正念場のことを言い、山登りにおいては、「胸が苦しくなるほどキツい」「胸にくっつくくらいの急な坂」であることの意味として使われる登山用語だ。胸突八丁の急な区間を登っていくと、川はどんどん小さくなり、登り詰めたところにあるのが「最終水場」である。

一ノ沢を登り詰めたところにある「最終水場」

 水は夏でも非常に冷たく、気持ちよかった。ここから先は水場がなく、訪れた登山者はみなここで必要な水を補充する。

 最終水場を通過すると、第一ベンチから第三ベンチと続き、常念乗越へと到着する。常念乗越まで来ると一気に眺望が広がり、感動的なパノラマを望むことができる。

常念乗越までくると「槍ヶ岳」や穂高連峰の眺望に感動する

■急登・ガレ場の続く常念乗越から常念岳へ

常念小屋のテント場からは槍ヶ岳や穂高連峰を望むことができる

 常念乗越にある山小屋「常念小屋」のテント場が今回の宿泊地となる。受付を済ませ、テントを設営し、寝袋など夜にしか使わないものはテントに置いておくことで身軽な状態で山頂を目指せるようになる。

 常念乗越から常念岳への区間はこれまで登ってきた登山道とは一変、森林限界を超えたガレ場の続く登山道となる。さえぎるものがなく、夏は紫外線が強いのでしっかりと対策をしておきたい。

ガレ場の急登が続くが、眺望はどんどんよくなるので焦らずに一歩一歩山頂を目指したい

 常念乗越から約1時間15分で山頂に到着でき、山頂からは北アルプスの山々の絶景を望み、雄大な景色を楽しめる。

常念岳の山頂では眺望を楽しむ人で賑わっていた

 常念岳は標高が2,857mあり、夏でも気温は低い。長い時間休憩するのであれば、防寒対策が必要だ。風が強いことも考え、ウィンドシェルもあるといい。