長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳連峰は、いくつもの峰で形成された山々の総称で国定公園に指定されている。

 その峰の一つである硫黄岳(いおうだけ・標高2,760m)の直下にある「雲上(うんじょう)の湯」と呼ばれる絶景を楽しめる日本最高所の露天風呂をご存じだろうか。

 今回は、その雲上の湯がある「本沢温泉(ほんざわおんせん)」を1泊2日のテント泊でまったり楽しんだ様子をレポートしていく。

■創業142年の「湯元 本沢温泉」

歴史を感じる外観の湯元 本沢温泉

 本沢温泉は、明治15年に長野県にある茅野市と小海町を繋ぐ旧街道の山域に建てられた宿で、2024年に創業142年を迎えた老舗だ。創業当時は山域に宿が無かったため、往来する旅人や商人の助けとなり、また、硫黄岳(いおうだけ)の湯川に湧く温泉を求める湯治客でにぎわったという。

 現在は八ヶ岳登山の中継地点として、多くの登山客が訪れる通年営業の山小屋として人気だ。温泉は標高2,150mにある日本最高所の露天風呂である「雲上の湯」と、源泉の異なる内湯である「苔桃(こけもも)の湯」を楽しむことができる。(※冬季は苔桃の湯が閉鎖され、代わりに「石楠花(しゃくなげ)の湯」が営業)

 また小屋の近くにテント場があるため、テント泊をすることも可能だ。小屋は予約が必要だが、テント泊の場合は不要。

湯元本沢温泉
営業期間:通年
小屋泊:1泊2食付き(新館個室 1万2,000円、本館個室 1万1,000円、本館相部屋 1万円)
テント泊:1,000円(温泉代別途)
温泉:雲上の湯、苔桃の湯、石楠花の湯全て1,000円

■歩いてしか行けない秘境の温泉へ

本沢温泉入口から歩いて行く

 長野県小海町に位置する「本沢温泉入口」の駐車場に車を停めて歩いていく。ちなみに四輪駆動などの未舗装路を走れる車であれば、本沢温泉入口から林道をさらに進んだ車止めのゲート前まで行くことが可能だ。

 駐車場からゆっくり歩いてゲートまで1時間、さらに1時間30分ほどで本沢温泉に到着する。登山道は木々に覆われた緩やかな登り。展望は時々木々の間から硫黄岳が望める程度でほとんどないが、日差しを遮ってくれるため、夏でも快適に歩くことができる。

本沢温泉のテント場はフラットでよく整地されていた

 本沢温泉に到着後、テント泊と温泉の料金を支払ってから設営。この日は午後から天気が崩れる予報だったため、テント場で終始のんびりと過ごした。

 夕飯はすぐそばの沢で冷やした飲み物とインスタントの袋麺というシンプルな組み合わせだったが、山の中で食べるというだけで何倍も美味しく感じるから不思議だ。

本沢温泉の内湯である苔桃の湯

 翌日の予報が晴れだったため、雲上の湯を明日に回して苔桃の湯に浸かる。雲上の湯とは源泉が異なるということで、せっかく訪れたのであればこちらも入っておきたい湯だ。泉質は赤褐色の硫酸塩泉で、芯から温まる少し熱めの湯加減が心地よかった。