山登り好きたちに「雪山登山入門の山としておすすめできるなかでも、とりわけ景色が素晴らしい山はどこか」と尋ねると、長野県の諏訪市と伊那市の境にある「守屋山(もりやさん)」の名前がよく上がります。

 標高は1,651mとそれほど高くはなく、麓の岡谷や下諏訪方面から見上げるとポコっとして目立たない丘陵状の山なのですが、山頂からの素晴らしい大展望で知られています。なんと100名山のうち、36座もの名峰がぐるりと山々が見渡せるのです。

 駐車場のある杖突峠の登山口からスタートすると、山頂までの標高差は600m少々。ゆっくり歩いて5時間ほどあれば往復可能なので、日頃の運動不足を解消しがてらの日帰り登山にはぴったりのルートでしょう。1月下旬に実際に登ってみたレポートと共に、この魅力的な山をご紹介しましょう。

■この時期は霧氷の美しさも見逃せない

守屋山登山口からスタート

 守屋山は東峰、西峰からなる双耳峰です。山頂に至る登山道はいくつかありますが、今回はダート道を4WDで上がり、山頂にもっとも近い登山口「守屋山登山道入口」のキャンプ場から東峰を目指します。

 ルートには特別危険な箇所はなく、傾斜のキツいアップダウンもありません。積雪量はそこまで多くはならない山とはいえ、この時期の雪山なので、登山道の凍結や積雪に対応できる装備は必ず準備しましょう。最低でも、軽アイゼンとトレッキングポールは用意するべきです。

装備は積雪量次第ですが、軽アイゼンとトレッキングポールは用意したい

 撮影前日はあいにくの雨で雪がだいぶ溶けてしまったようですが、夜のうちに冷え込んで湿り気を帯びた山に冷たい風が吹きつけた影響で、登山道から見上げる樹上は真っ白な霧氷に覆われていました。

 じつは守屋山は大展望だけでなく、霧氷が美しい山としても有名なのです。

白く見える部分は雪ではなく、すべて霧氷!

 ゆっくりと標高を上げていくうちに、木々の先端に陽が当たり始め、緩んだ霧氷がキラキラと光ながら真っ白に凍った森に落ち始めました。森中に霧氷が降り注ぐ音は、まるでサラサラと小川が流れているかのよう。場所によっては大きな氷も降ってきて、フードをかぶっていないと痛いくらいです。

 山頂で会った地元の登山者曰く、条件が整った時だけ年に数度見られるかどうかの希少な景色だそうです。とても美しく、不思議な体験でした。