年間40以上の山行を続けていると、実に様々な登山者たちに出会う。とくにアルプスなど登山に人気のエリアになるほど、個人的にちょっと心配になってしまう登山者に出会うことが多い。ここで紹介するのは筆者が山で実際に出会った装備、体力不足だなと感じた登山者たちのエピソードである。登山を安全に楽しむためにはどんな装備が必要なのか、ぜひ一緒に考えてもらいたい。

■真夏の北アルプス焼岳で「水を分けてください」と声をかけられる

筆者が日帰り装備で持っていくボトル。ただし季節や気温に応じて量は変わる。真夏は凍らせた飲料も持参する(撮影:兎山 花)

 真夏の北アルプスの焼岳(やけだけ)に日帰りで登ったときのことである。新中の湯登山口から登り始め、最初は樹林帯の中を歩いていたため直射日光は遮られていたが、1時間半ほど登ると樹林帯を抜け、直射日光を受けながらの登山となった。その日は気温が高かったので、筆者はいつもより大きい水の容器を、ザックの両サイドポケットに入れていた。

 ふと後ろからソロの女性登山者に声をかけられた。「水が足りないので、分けてもらえませんか?」と。まだ山頂まで1時間半は登らなければいけないし、この暑さの中分けられる程の水の余裕もなかったためお断りしたところ、女性は下山を選ぶことなくさらに炎天下の中、山頂に向けて登り始めた。

 そして、次々と登山者に「水が欲しい」と声をかけては断られていた。それでもあきらめず登り続けて、ようやく下山してくる登山者から水を分けてもらえたようであった。

■頭から血を流しながら歩いている登山

エマージェンシーセットは誰が見てもわかるように「emergency」と書いている(撮影:兎山 花)

 夏、北アルプスの立山から薬師岳に向かってテント泊で縦走しているときのことである。

 前泊地のスゴ乗越小屋を出発して2時間半ほどたった登山道上で、頭を血で真っ赤に染まったタオルで巻いて歩いているソロの男性が前方から歩いてきた。心配になり声をかけてみると、歩きながら写真を撮ろうとして岩場でつまずいて転んだらしい。非常用のファーストエイドキットは持ち合わせてなかったため、頭にタオルを巻いてスゴ乗越小屋まで歩いている途中であった。

 患部を見せてもらうと数センチほどの傷口がパックリとあいていた。筆者たちは感染防止のためビニール手袋をはめて、できる範囲の応急処置をしたのち彼と別れた。